egg 蘭丸の隣の部屋に案内され、ふわふわと揺れる世界に座る。 夕飯の準備がもうすぐ済むのが匂いで分かる。 焼き魚のこんがりとした匂い。 煮物のくつくつした音。 「お前さ、」 ふすまが地面を擦る音。 いつきを呼ぶ声。 「政宗の弟子か何か?」 「弟子じゃねえ、マネージャーだ」 「えっ、ガキがマネージャーやんの?」 「逆だ、逆。政宗がおらのマネージャー」 いつきを呼ぶ、夕食の声。 「…お前、歌うまいの?」 「うまくは、ないと思う」 「何だよそれ!」 いつきを呼ぶ声。 夕食の時間。 蘭丸は役者の卵だという。 いつきは何かの卵だろうか。 だし巻き玉子が喉につっかえる。 |