職業 | ナノ

klaxon


政宗の車のBGMは相変わらずクラシックだった。

「まだそんな顔してんのか。ブサイクになるぞ」
「おら、元からブサイクだから構わねえ」

ため息とクラシックの共演に、政宗はクラクションで返す。
いつきの回答に不満だったのではなく、道路の真ん中で赤の車が止まっていた。

「おいおい、あの赤い車…真田か?」
「売れっ子俳優の?」
「ああ…だったら面倒くせえな。浅井だったらいいんだか」
「浅井?」
「浅井」

意味もなく繰り返し、政宗はハンドルをきる。
多分、浅井だった。