職業 | ナノ

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政宗くんがそろそろ心配し出す頃だ、と竹中は立ち上がり、俯くいつきの手を取った。
どんな顔で、どんな思いで、竹中は五人を見ていたのだろう。
辛くて、悲しくて、苦しい。

「君を利用する形になるのは否めない。僕のよからぬ企み事だから、無理に…」
「あのっ」

硬いソファはよく跳ねて、思った以上に勢いがついた。

「おら、歌います。政宗が聴いて、分かってくれなくても、歌い続けます」
「いつきくん…」
「おらも政宗の生の歌が聴きたい。できれば一緒に歌いたい」

マイクから手を離した政宗の分のマイクも、いつきが持とう。
いつきに語りかけたあの声で、いつきに勇気をくれたあの声で、二人でハッピーを与えたい。
そんな贅沢を叶えたい。

「そうだなー、俺もドラムを練習し直して待ってるよ」

へらっと笑った締めの言葉は、ハッピーエンドを予測する未来の言葉。