職業 | ナノ

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人懐こそうな守衛さんに頭を下げた後の、長い長い廊下。
お兄さんの靴の音だけが響いていく。

三度目の角を曲がると、白い壁に凭れていた人が頭を上げ、イライラした声を出した。
どうやら相当待っていたらしい。

「政宗くん、その子かい」
「ああ、cuteだろう」
「キュートだろうが何だろうが構わないよ。歌えるんだね。早く歌ってみせたまえ」
「まあまあ、そう焦るなって」

ちらりと見られた白いお兄さんの紫の縁取りの眼鏡が、トップスターのお忍びさんみたい、と後から興奮気味に言うと、お兄さんは「ありゃあただの会社員だ」とつまらなそうに笑った。