職業 | ナノ

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先程から携帯が鳴り止まない。
面倒だがそろそろ取るしかないようだ。
美人のため息、一つ。

「はい」
「あっかすが殿ですか!真田ですが!」
「分かっています。登録していますから。それに殿ではありません」
「どうやら撮影が長引きそうだから、迎えに来なくて大丈夫でござる」
「…ござるになっています」
「あっはい、かたじけ…ごめんなさい、ではっ」

雷撃のように電話が終わり、美人はまたため息。
真田はいい俳優だとは思うが、役に入れ込みすぎるのが難点だ。
何でもなあなあにこなすアイツの方が、なんて。

「今のなし!」

照れ混じりで自動販売機に拳をぶつけると、鳴ってはならない音がした。