謙ユウ


 

俺の愛するユウジはホンマに可愛え。俺の言葉にイチイチ反応し、俺を煽るしか意味のない眼差しで睨む…そしてその瞳が潤むまでもが可愛らしい。
ひたすらに苛め抜くのも楽しい、何て思う俺はアカンのんやろなァ、なんて。



「謙也ー、暑いから離れて欲しいんやけど」



そんな事を考えていた日曜の午後。今日は部活が午前のみっちゅう事で、帰りにユウジん宅へお邪魔した。ユウジと付き合い始めて必然的に互いの両親とは顔見知りになり、今じゃユウジのオカンは俺が来れば泊まるやろ?なんてめっちゃフレンドリー。逆も然り。
さっきもそんな話題が出てユウジが照れからか死なすど!と決まり文句を吐き、部屋へと上がって来た。

本当は泊まって欲しいクセに…
ホンマ、素直やない奴や。



「ユウジ」



やからこそ俺のイタズラ心が一人歩きする。わざと抱き着いて雑誌を見るユウジへと密着、んーええ香りやなあ。そうすれば先程の勢いとは裏腹に大人めのトーンで 暑い と言い訳が返ってきた。
何処までも素直やない俺の恋人は、目線を逸らして名前を呼ぶ俺にもう一度離れて と言う。ユウジは意外と寒がり。更にこの冬本番の時期で暑いやなんて阿呆のする言い訳や。現にユウジの指先は冷たくて、白い。唯一暑そうに見えるのは真っ赤な頬ぐらいや。

そんな可愛らしい事をしでかしてくれるこの子はホンマにかわええ。



「なあ」

「なん、」

「何で泊まったらアカンの?」



ぎゅう、と力を込めて聞いてみた。ユウジは核心を突かれたような表情で目を泳がす。
ほうら、素直やないユウジくん。いつまで強気な態度が持つんやろなぁ?



「明日、学校やん、か」

「今まで明くる日学校でも泊まってたやん」



う、と詰まる表情を見せたユウジに俺は心でニヤリと笑う。しかし表面上は捨てられた犬の様な瞳で見つめ、更に追い討ちをかけていく。



「や、やって」

「ん?」

「…その…」

「なん、ユウジは俺の事嫌いなん?」



そしてあと一歩の所で俺は敢えての変化球。
ユウジにとってはある意味ストレートやろうけど、その球をユウジは俺の予想通りに打ち返してきた。



「あ、阿呆!んな訳ないやろッ死なすど!」



ん、これはいつも通り俺のハートにストライク。
若干涙目で言葉を探しつつあないな事言われると動転して頬をまた染めながらこっちを向いて反論する。
あー、ホンマ可愛え。毎度の流れやのにまんまと引っ掛かり、からかわれてる事に気付かんこの子はホンマ何者やろか思うぐらい可愛え。



「ほな、なんでアカンの?」



でもまだ可愛らしい仕草、声、表情を見たいねん。いつもならここら辺で折れたるけど今日は駄目。最高に気分がええからもうちょい楽しませてくれへん、ユウジ?



「…あ、明日…、痛いの、嫌やから…」

「痛い?」



口をもごもごさせながら言いづらそうにユウジは視線を向ける。やっぱりそう言う方向に考えてたんやなー、流石ユウジや。健全的で安心。



「っ、当たり前やろ?負担かかんねんから身体痛なるんも、」

「俺、別に泊まりたいとは言うたけどヤるつもりはあらへんで」



ぶんぶんと首を振るユウジに悪魔の笑み。
そこまで来るとユウジは「しまった!」と自分だけが意識していた事、「なんでなん?」と期待を表す瞳、二つが混ざったような表情を浮かべる。

素直やない彼は"本当は泊まって欲しいねん"の言葉を"死なすど!"って乱暴な言葉に隠し、"本当は触ってほしい"の意味を"離れて"の言葉に込めて伝える。
解っとるからこそこうやってちょっかいかけたくなんねん…可愛過ぎるんや、阿呆。



「……謙也」

「ん?」

「………泊まる、やろ?」

「当たり前やん、ユウジ」



この後に来るユウジの一瞬のデレ加減に俺はノックアウト、やから弄る意味があんねんな!




嫌よ嫌よも?




シての内、なんて言うたら殴られそうやからやめとこか。

ツンデレなユウジくんは
今日も明日も俺のモノやで?
渡したらんからなー、なんて。




))END!

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 幸さまから頂きました〜
 



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