届け、届け、届け…!

どうやら私には念力が使えないらしく、この気持ちは伝わらなかった。

ぐるぐるに巻いたマフラーと、白い息。寒い寒い冬のなか、私たちは学校の帰り道だ。

「あーさみぃ…早く帰りたい……」

「ね、本当に今日は寒い…」

下がってしまった靴下を上げて、少しでも温かくする。カワイイからとミニスカートにしているものの、この時ばかりは少し後悔する。そして、男子のズボンが羨ましくなる。
じーっと彼のズボンを見つめていたら、怪訝そうな顔で「どうした?」と聞かれてしまった。私は焦りながら、「なんでもないよ!」と言った。

「…ならいいけど」

「……うん」

いじけたようにそっぽを向いて、吐き捨てるように彼は言った。機嫌、損ねちゃったかな…
彼が向こうを向いているのをいいことに、私はもう一度念を送った。

(すき、すき、すき…)

いけ!
届かないと分かっているのに、私は何度もコレをやっている。私は超能力者ではないし、それらを信じているわけでもない。
例えるなら、ほぼ無宗教の日本人がいざというとき「神頼み」するようなものだ。

「………なまえのさあ、」

「うっ、うん!」

急にくるりとこちらを向いたため、私はついつい吃ってしまう。うー、なにやってんの。私ってば。

「頭の中読めたかも」

「はあ?」

もしかして念力が届いた?

サイコキネシス

091228

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