※イナズマ3ネタバレ
※コトアール捏造
いい子いい子、と頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。私が「本当にかわいいねえ」と言うと、その細めた目を見開き「かっこいい、でしょ」と必死になって言う。それがかわいいのになあ。
「なまえさん」
「頑張ってきてね!」
言葉を遮ってそう言うと、言おうとしていた言葉を諦めたのか、「…うん」と頷いた。
ごめんね、と心の中で謝る。そして頭を撫でようと腕を伸ばす。彼が大きくなってしまったおかげで私は腕をあげなければならない。あんなに小さくてかわいかったのに、こんなに大きくなってしまった。成長ってすごいなあ。
「撫でなくていいよ」
「でも、」
「なまえさんの応援だけで十分」
「……そっかあ」
応援とか、頑張ってっていうのもあったけど、なにより私がしばらくロココくんに会えないから、さびしくなるからそうしたかったんだけどな。「じゃあ行ってくるね!」とにこにこするロココくんになにも言えなくて、腕を引っ込めた。
なんだか雰囲気っていうのかな、なにかが違う。昨日まで泣き虫だったのが嘘みたい。
「あの、大丈夫?」
「うん。これくらい、平気だよ」
「ならいいけど…」
転んで、ひざ小僧から血が出ている。うわあ、痛々しい。でもロココは泣かない。それにびっくりして、大丈夫なのかと聞くと、無理したような笑顔で問題ないと答えた。
急になにがあったのだろう。些細なことで泣いていたのに、おかしい。いい成長なのかもしれないけど、あまりの変化に驚いてしまう。
「うう…」
「もうちょっとだよ、……おしまい!」
「…はあ。やっとおわった」
「よく我慢したね!偉い偉い」
消毒する時なんて、しみると言って泣いていたのに。頭を撫でてあげると、「えへへ」とロココは笑った。
「また勝ったよ」
ロココくんから電話がきて、嬉しい言葉を伝えてくれた。
私のすぐ後ろにいたみんなに、「勝ってるって」と小声で伝えると、歓声がわきあがった。
「みんないるんだね」
「うん。結果知りたいっていうから…」
「なまえさん、僕出発する前に撫でてもらわなかったの今更後悔してるんだ」
「え…なんで?」
「さびしいっていうか。ね?」
「…………えと、頑張ってね!誰かに代わるね」
盛り上がっている内の一人に受話器を押し付けて、その場から逃げ出した。
今更、本当に今更だ。今更すぎて、困る。私までさびしい。我慢してたさびしさが今更、押し寄せてきた。
「ロココ、くん」
「急によそよそしいなあ」
背がぐんぐん伸びて、いつの間にか私に追いついたロココ。私は思春期という奴で、なんだかロココが弟みたいなものとは思えなくなってきていたのだ。
「ロココくんじゃ駄目?」
「別に構わないけど…じゃあ僕もお姉ちゃんのことなまえさんって呼ぼうかな」
「うわ、他人行儀…」
「おね…じゃなかった、なまえさんから言い出したんじゃん」
ふん、とそっぽを向くロココ「くん」に、そういえばそうだ。と思い「そうだね。好きに呼んで」と言う。そうすると「へ?あ、うん…」と間の抜けた返事が返ってきた。
「ロココくん、」
「なまえさん、」
「ゴッドハンド、X!」赤く大きな手のような形のものが、ボールを止めた。
「すごいね」
「えへへ、この次にはタマシイザハンドもあるよ」
「あの練習してた技?」
「そうそう」
モニターの中のロココくんはゴールを守っている。強いなあ。相手も強いし、ロココくんも強い。…最終的にロココくんは負けたけれど。
「ロココくんは頑張ったよ」
「…うん」
「ほら、シュートだって決めてるし」
「……そうだね」
私じゃ駄目かな。励ませないよね。ロココくんは世界一を逃した。その悔しさは私なんかじゃ分からないよね。なにを言っても無駄かもしれない。ロココくんが自分の力で立ち上がれるまで私は待つだけなのかな。
「そういえばなまえさん。まだ帰ってきてから撫でてもらってないよ」
「ああ、確かにね」
優しく頭を撫でると、「次があるもんね」とロココくんは私をしっかり見て言った。
「また次に頑張るよ。次は絶対勝てる」
「どうして?」
「今度は僕ももっと強くなるし、なまえさんにたくさん頭撫でてもらうんだ」
「そんな、私が?たくさんって、ええと、」
「さりげなく告白したつもりだったのになあ」
「こくっ…!?」
自分でも頬に熱が集まったのがわかる。だって告白って、ロココくんが私のことを好きってこと、でしょう。私だって好きだから、両思いみたいな…いや、みたいじゃなくって両思いだ。「えへへ」とロココくんは笑うけど、それが素直にかわいいと思えない。
「今度からはまたロココって呼んでよ」
「もう、仕方ないな…」
「うわっ!乱暴だなあ」
ぐしゃぐしゃ、乱暴に頭を撫でる。これを返事だと思ってほしいな。「ロココ、これでいいよね」と言うと、「百点満点だよ、なまえ」と私の名前をロココは呼んだ。
100703
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