リハビリに

May.6 提督にお説教する吹雪さん
 提督は正座していた。
「一体、何度やれば気が済むんですか」
「敵空母をワンパンで倒す戦艦が出るまで…」
「うちが慢性的な鋼材不足ってご存知ですか?」
「……金剛ちゃんたすけて」
「OK!吹雪、提督の無茶がなかったらワタシはいまここにいないヨー?これがディスティニーネー!」
「金剛さん、紅茶が食堂にありますから、ぜひどうぞ」
「サンクスネ、吹雪!じゃあね提督ゥ」
「ああっ…金剛さん……」
「お説教はまだおわりませんからね。金剛さんによって戦力が大幅に上がったことは否定できませんが、司令官。金剛さんをおなかいっぱいにするほどの燃料がこの鎮守府にあるんですか?」
「ありません…」
「同じ戦艦の長門さんは?」
「レベル1のままです…」
「どうして懲りずに戦艦レシピ回したんですか?」
「2-4攻略に向けて…戦艦二隻は必要って聞いたので……」
「まだ1-3クリアして大喜びしたところですよね?」
「でもでも、今から手に入れておけば、戦艦の子もレベリングできるし、焦って建造狙うよりいいかなって…」
「司令官」
「だって、1-3だって普段と全然違う編成でようやくクリアだったし」
「…そうですね。わたしの他は軽巡洋艦の方々でした」
「駆逐艦の子はレベルしっかり上げてたけど、やっぱり轟沈が怖くて。HP少ないからね」
「……すみません」
「ち、違うよ!燃料も弾薬も少なくて済むし、わたしが着任してからずっと一緒だったから、その分大切にしたかったんだ」
「司令官……」
「それでも、吹雪ちゃんはずっと旗艦やってもらってるし、いてもらわなきゃ調子でない気がして、1-3でも出撃してもらったけどね」
「わ、わたし。あのときあまり活躍できなかったですよね」
「そんなことないよ!敵艦にクリティカル当てて中破させたのは吹雪ちゃんじゃない!他の軽巡洋艦と同じくらい、いや!それ以上に輝いて見えたよ!」
「司令官!」
「吹雪ちゃん!」
 ひし、と抱きしめあって、また「司令官!」「吹雪ちゃん!」「司令官!」「吹雪ちゃん!」と呼び合う。

「あれがジャパニーズチョロイ、ネ?」
「いや〜あれは親バカって感じじゃないかしら」


うちの鎮守府に金剛さんが建造されました記念!
完全にうちの鎮守府です。長門さん放置してごめん。近々金剛さんと一緒に育成するからね…
最後のセリフは衣笠さんのつもり。衣笠さんは最初に出会った重巡洋艦です。どうやらレア気味で、しかも燃費のいい重巡ということで重宝しております。
2-4には戦艦二隻くらい必要、と聞いて戦艦レシピを回していましたが、きちんと戦艦二隻出ました。しかしそうなれば空母もほしい!となるのがこの提督です。わたしです。(いい笑顔)
加賀さんほしいです。それに、金剛姉妹も揃えないと。長門さんがいるなら、むっちゃんにも来てほしいし。欲は尽きないなあ(遠い目)

April.12 うざすぎる狛枝
 殺せと殺せと言葉が頭の中に何度も何度も響いてきて、わたしの中に、家族のこととか友達のこととか、なにより目の前の頭がおかしいとしか思えない人間がそう望むのなら、その通りにしてしまえばいいんじゃないか、なんて思えてきて、ぐるぐるぐるぐる、いろんなことを堂々巡りに考えているうちに、殺せと殺せと言う声はわたしの声になっていった。殺してやる、それが望みなんだろう。わたしは殺すことが、望みなんだ。利害関係の一致は大事なことだ。

「僕みたいなゴミムシの望みを叶えてくれるなんて、#name#さんもなかなかいい趣味してるね。いや、もちろん有難いんだけどさ……君のその希望に輝いてる瞳、見てるだけでゾクゾクするよ。僕を殺すことしか考えてないんだね。君の希望のために、僕は犠牲になるんだ。僕なんかが、僕なんかの命が、希望の礎になるんだね。死んだ後の世界が見られないのが残念だよ。あっ、でも希望のある世界に僕なんかが存在してちゃ駄目だよね……あはは、分かってるよ。話が長いよね。ウザいでしょ?でもさ、もう僕死ぬんだ。興奮して、口が止まらないよ!ねえ、どうやって僕を殺す?直接殺してくれたっていいし、僕が全てお膳立てしたっていい。散々甚振って、詰って、苦しめてくれたっていい!#name#さんならやり遂げてくれるよね!期待してるよ!」

 この人ほんと気持ち悪い。こわい。

「あの、」
「今更やめたりしないよね。ね?ね?ね?僕のこと、殺したいよね?そうでしょう?#name#さんは優しいし、すんでのところで踏みとどまっちゃいそうだよね。貶してないよ。その優しさが、決心させたんだよね。僕が死んで、#name#さんは最高の希望になるんだ。僕の命と、皆の命を踏み躙って、#name#さんが一番になれるよ。その願い、叶えてくれるよね?だって君は僕の希望だ。優しい#name#さんなら、僕の一生のお願い、聞いてくれるよね?ゴミクズにも優しい#name#さん、ねえ。ねえ、ねえ!」

January.2 つぼみおじょうさま生誕祭
 おじょうさまはわたしの大切なひとだ。この家の使用人の中でいちばん下っ端のわたしに、おじょうさまは優しくしてくれる。わたしがこの屋敷の使用人でいちばんおじょうさまに年が近くて、たぶんこの屋敷でいちばん頭が悪く、おどけているからだ。おじょうさまはよく泣きながら、わたしのエプロンにすがり付いてくる。だれに虐められたわけでもない、あえて言うなら、周りの視線に?だろうか。おじょうさまは小さなからだを震わせ、小さな手で一生懸命わたしにすがる。
 おじょうさまの境遇は、小耳に挟む程度には知っている。すこし複雑なのだ。ほんのすこし。でも、すこし複雑なだけで、難しいことじゃない。まして、おじょうさまに冷たい目を向ける要因になんかならない。まあよくある話。おじょうさまはまだ幼く、か弱く、よくある話を受け入れられない周りに敏感なのだ。
 ドジばかり踏むわたしにおじょうさまは優しい。転べば「いたくない?」と眉を下げ、指を切れば絆創膏を貼ってくれる。「いたいのいたいのとんでけー、」なんて、ふうっとわたしの手に息を吹きかけ、おじょうさまはほっとしたように笑う。

「おじょうさま、ありがとうございます」
「た、たいしたことじゃないよ…」
「おじょうさまのおかげで、いつも傷は出来ても痛みは無いんですよ」

 おじょうさまの頬がピンク色に染まる。それからボソボソと、「うそだ…」と呟いた。

「うそじゃないですよ!ほんとです!おじょうさまは魔法使いみたいです」

 もお、とおじょうさまは笑って、わたしの手を撫でた。


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つぼみおじょうさまお誕生日おめでとうございますうふふふふふふ
かわいいかわいいつぼみおじょうさまが中卒くらいのメイドさんと仲良くしてたら可愛いなと。かわいいかわいい。

September.20 マイケル
「ねえわかる?どういうことか。人の命って、とても大事なんだよ」
 日曜の朝は牧師さまがいつもこう言う。みんな平等で、みんな大切だから、みんなのことを愛しましょうって。その教えを説かれたこどもたちは月曜の朝、スクールバスでいじめられっこの足をつっかけて転ばせて笑う。わたしたちは大方、そんなふうに生きているのだ。
 マイケルはいじめられっこのひとりだった。ママがビッチで笑えるし、マイケル自身暗くてなに考えてるか分からない。マイケルは授業中に当てられるとだんまりを決め込むし、なんだか空気読めてない。だからいじめられてる。
 マイケルはわたしの言葉をしっかり聞いているのに、だんまりを決め込んでいる。先生に質問されたときみたいに。だんまりしてるくせに、瞳はとても生意気で、じっとりわたしを品定めするみたいに見つめている。……気持ち悪い。こんなやつ、どこか別の土地に越してしまえばいいのに。
「人の命って大切なんだよ。もし命を落としたら、周りのひとが悲しむの。命がなくなると、悲しいの。お金がなくなったら悲しいでしょ?それと一緒」
 前におこずかいを落としてしまったことがあった。どこを探しても五ドルは見つからなくて、きっと誰かが盗んだのだと思った。わたしの財布から抜いたか、わたしがうっかり落としたのを拾ったか、どちらにせよ、わたしのリンカーンは誰かの手に渡ってファックされたも同然なのだ。
 とても悔しかった。
 あのお金は、パパにお願いして貰った月のおこずかいとは別の、ちょっとしたお駄賃だった。お菓子を買うからって少しだけ貰った、大切なお金。あのお金がなくなったせいで、わたしはキャンディが買えなかった。奪ったやつのせいで!
「お金が人に奪われたら、悔しいし、復讐したくなるでしょ?それと同じ。人の命が奪われたら、奪ったやつは恨まれるんだよ」
「…そう、なの」
 マイケルがようやく口を開いた。意外そうに言うから、わたしは思わずにやけてしまった。
「そうだよ。恨むの。死んだやつの家族とか、友達がさ」
「恨んで、どうするの」
「殺しに来るんだよ。復讐されるの。そんなの、ごめんだけど」
 女子トイレにうっかり入ったのがきっかけだった。「最近調子乗ってるし、ちょっと財布から抜いてやったんだよね」なんてわたしのことを言っていた。長い髪を鏡の前で整えながら、いやな笑顔で、わたしの五ドルの話をしていた。五ドルは彼女の髪飾りに消えたらしかった。
「だから、手伝ってよ。わたし、復讐とかそういうの、されたくないんだよね」
 わたしは正当な復讐計画を立てた。それなのに、さらにまた復讐されたらたまらない。あと、警察に捕まるのも勘弁だ。
「この前、林の中でいじめられてたよね。見てたんだ。一回やれば、もう慣れたもんでしょ?」
 目を逸らされた。照れたみたいに、ぷいっと。なんだ、結構普通なところもあるじゃん。ちょっと安心した。ただの不気味なやつだと思ってたけど、ちょっとだけ、ちょっとだけ、そうでもないかなって思った。
「じゃあこの死体、どうすればいいの」
「うーん、埋める?かな。臭くてやなんだもん」

(理詰めが通じるマイケルってマイケルじゃないなってここまで書いて思いました)
(リメイク版のショタマイケルさん)

September.1 ゴーストフェイス
「いまから行ってもいい?」
 朝、目が覚めてまずこの電話がきた。あまりにも突然だった。
「夢で見たんだ。きみが、今日運命の相手に出会ってすぐ恋に落ちるところを」
「ゴーストフェイスさん、なんでそこで会いたくなるんですか」
「だってさ、俺がずっときみの隣にいたら、その運命を邪魔できるんじゃないかなって思ったんだ!」
 馬鹿かな、なんて何度思ったのかわからないことを考えた。わたしはとっくのとうに、ゴーストフェイスさんのこと、好きなのにな。本当に鈍感。ばかばか。
「いいですよ、朝ごはんも準備して待ってますね」
「マジで!!手料理楽しみ、やっべえ!」
「コーンフレークです」
「……とにかく今から行くから!待ってろよな」
(ゴーストフェイスさんの素顔にときめくまであと少し)

August.31 ギラム
 ギラムがぼやく。あんなひと、もう現れない、と。
「いまでも夢に見るんだ。同棲していたときのこと、別れを切り出したときのこと。もぐらを探し出すのに、あの別れは必要だったことは理解してる。自分で出した結論だ。でも、でも、駄目なんだ。割り切れてない、のかもしれない」
 それはまあ、そうだろう。こんな未練タラタラで、割り切るもなにもない。ギラムは珍しくグダグダウジウジしている。恋愛に関して、彼はまったく可愛くなる。
「まあ次だよ次、いいひとが現れるって」
「そんなの気休めだ」
「そりゃそうだよ」
 ギラムは半ば絶望したような顔をしてわたしを見た。信じられない、って顔で。そんなこと言ったって、彼氏のひとつも出来ないわたしにそうそう恋愛のアドバイスなんか出来るはずがないわけである。
「前のひとがもう駄目なら、進むしかないでしょ。出会いなんか割とどこにでもあるはずだよ」
「本当、お前は能天気だな。……ありがとう」
「どういたしまして」
 ギラムはジャケットを着ると、いつものキリッとした表情を作る。ウジウジするのはとりあえず終わりらしい。
(仕事の合間にガールズトークしてるギラムさん)
mae ato