「おっきいですねぇ」


「んー? あぁ、まぁなっ。」



秋が始まって、少し涼しくなってきた今日。
午前中の授業は終わって、今は昼休みなのです。
私は今、男子バスケ部に所属している木吉先輩と一緒に、学校の屋上に居ます。
屋上は普通は立ち入り禁止なのだけど、なんと木吉先輩は屋上に通ずるルートを発見したのです。
よって、ここは私と木吉先輩だけの、秘密なのです。
秘密って響きが、なんだか嬉しくってどきってする。


「俺こんな手大きいから、バスケの時も片手でボール使えるんだ」
「流石ですねえ。同じクラスの男バスの人、木吉先輩の事ほんとすごいって、憧れてましたよー。」
「そんなに言う程でも、ねぇんだけどな」


先輩はちょっとだけ、淋しそうに笑った。
今は秋で、私は二年生、先輩は三年生。
男バスの夏の大会も、1ヶ月ぐらい前に終わっていた。
受験生である先輩は、今は引退で部活をやっていない。


「やっぱり、高校でもやるんですか?」
「まぁなー。こんなデカイ身体でできることっちゃ、そんくらいさ」


そんなこと、ないと思うけどね。
でも、木吉先輩は本当に上手。練習を何回か見に行ったことがあるけど、なんだか他の人達とは格が違う感じがした。
バスケなんてほとんどわかんない私でも、先輩がすごいってすぐにわかった。
大会では強豪校に敗れてしまったらしいけど、それでも大会での成績はかなり上位だった。


「倒したい相手も、できた」


先輩はそう言って、拳を握りしめた。



「……負けちゃったっていう、強い学校の人ですか」
「あぁ。本当に滅茶苦茶強くって、歯が立たなかった。キセキの世代なんて呼び名は伊達じゃぁなかったんだよなぁ」


そう言って自嘲気味に笑う先輩の表情には、まだ悔しさが残ってた。


「……頑張ってくださいね。応援しかできないですけど。」
「おう! まだ半年も先だがな、やっぱあの悔しさは忘れられねぇって」


また笑った木吉先輩の笑顔は、いつもの木吉先輩だった。
先輩は、すごい人だ。
だから、きっと大丈夫なんだ。


「なまえは? 高校から部活とかやんねえのか?」
「私ですか? 運動苦手ですし、文化系もあんまり得意ではないですねー…」


そう、私は3年間帰宅部なのでした。
だから、なんとなくだけど、部活に燃える先輩に憧れを持ってしまっていたりした。


「高校は決めてんの?」
「まだ全然ですよー。近いところがいいなぁ、とは思いますけど。」
「じゃあさ、同じとこ来いよ!」
「えっ。」
「それでさ、バスケ部のマネージャーとかやってみねーか? それなら運動苦手とか、関係ないぜ!」


先輩はにかって笑って、「どーかな?」って聞いてきた。
私は「うーん」って悩むフリをして、フェンスの向こう側に顔を向けて先輩から顔が見えないようにした。
今、絶対に顔真っ赤だから。


「いいかもしれないですねえ。やってみたいです。」
「おっ! 馬路か、楽しみだな!」


嬉しそうに笑う木吉先輩に、益々顔が赤く火照っていくのがわかった。
鼓動の早さも、身にしみた。



「じゃあ俺、先に行くからさ、絶対来いよ!」
「……はいっ。」


放課後は本屋でスポーツ雑誌買っていこう、なんて考えながら、まだ少し先の未来に夢を見る。
木吉先輩が誠凛高校に入学して、バスケ部を創るのは、もう少し先のお話。


20121012
照栄中時代のお話

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