デカい。ただひたすらに、デカい。
彼、紫原君に対する第一印象だ。


紫原君は黄瀬君とペアを組んでいた、同じくバスケ部のスター選手。
身長は2m越えという、日本人離れした巨体の持ち主。
黄瀬君も189cmとおっきくて、あたしも別に小さくない、寧ろ女子の中では高めなのに、この二人を前にすると身長が縮んだような錯覚を覚えた。



前述通り二人はバスケ部のスター選手。
モテない筈がなく、彼らを狙う女の子は数知れない。

班決めでも相当狙われていたようだが、多くが二人の競争率の高さに早くも断念したらしく、逆に組む人が居なくなった、というのが二人が余った原因だった。



調理実習当日。
班ごとに別れ、クッキー作りが始まった。
私は一応お菓子作りが趣味だった。
クッキーも作ったことあったから、男子二人とでも大丈夫だった。


「**っちすごいッスね〜!めちゃくちゃ手慣れてるッス!」


前は名字にさん付けだったんだけど、黄瀬君は私のことを**っちと呼ぶようになった。
仲良しの人にしかそういう呼び方はしないらしい。…女子の視線イタイ。


「一応、お菓子作り得意なんだあ」
「そーだったんスか!頼もしいッスね!」


にこっと笑う黄瀬君は、私の隣で一緒にクッキーの型をとっている。
楽しそうにスタンプみたいにぽんぽん押す仕草を見てると、そりゃモテるなぁ、と納得する。


一方。
もうひとりの班員である紫原君は、使い終わった食器を洗ってくれていた。
でもそれも終わったようで、「終わった〜」なんて言って近寄ってくる。



「ありがとーございます」
「んー、いーよ、クッキー食べれるしー?」


ゆるい雰囲気をまとう紫原君は、ポケットに入ってたまいう棒を取り出してしゃくしゃくかじりだした。
クッキー関係なく食べてるし。


クッキーはその授業の終わりに焼き初めて、昼休みに取りにくることになっていた。
三人一緒に行きたいな。なんて思っていたが、甘かった。
トイレ行った後に誘おう、なんてのが甘かったのだ。



教室に戻ると、既に取りに行って帰ってきた女の子達が黄瀬君にクッキーのプレゼント攻撃を仕掛けていたのだ。
クッキーを準備周到に可愛らしい袋に入れて、黄瀬君に群がっている。
かなり人が集まってて、とても中に居る黄瀬君のところまでなんて行けない。


どうしよう、とわたわたしていると、紫原君が近づいてきた。


「黄瀬ちん無理そーだし、俺らだけで行っちゃおー?」
「う、うん。しょうがないね。」
「黄瀬ちん、モテモテだからねー。よくあるよくある。」

紫原君も人の事言えないような。
言いそうになって、我慢して、そうなんだって返した。

「●●ちんが作ったクッキー、楽しみー。」


紫原君は、ゆるく笑った。
素直に、可愛いなあって思った。

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