気づかない間に眠ってしまっていたらしい。目を覚ますとそこは名前の病室だった。名前は、眠っていた。重い体を起こすと看護師がやってきて、俺が寝ている間に意識を取り戻したことを知った。タイミング合わねえの。一旦家に帰ることになり、荷物を持った。名前を見ると、確かに俺が寝る前までよりも安心したような表情に見えた。気のせいではないはずである。今まで、ずっと近くで見てきたんだ。俺が、ずっと。こいつの周りにどんなに人がいなくなっても、俺はこいつの横にいた。帰り際に名前の頬をつねってやってから、病室を出た。


二回目の目覚め。花宮くんはもういなかった。流石にずっとここにいたのだから、途中で帰らなければならないのは当然だ。少しさみしいけれど、花宮くんならまたきてくれる。来たら、ちゃんと話をしよう。落ち着いて、頑張って、謝ろう。そう覚悟を決めた頃、別の来訪者が現れた。

「おぉ、ちゃんと起きとるやん。良かったわ、記憶障害とかあったりせえへん?自分ワシのことわかるか?」
「…わかりますよ、今吉先輩。わざわざ来てくれたんですか」

今吉先輩だった。一体どうしてわたしが入院していることを知っていたのかはわからないが、今吉さんは花を持って、わたしの病室に現れたのだ。


「そら可愛い後輩が大怪我なんて聞いたらいてもたってもいられんくてな?この前来た時は花宮に追い返されててんけど、丁度良かったわ」
「そ、そうだったんですか…」
「今日はおらへんの?」
「私が寝てる間に、帰ったみたいで。今日はわからないです」
「そうか」

今吉先輩は近くの丸椅子に腰掛ける。

「花宮に随分優しくされとんな」
「責任、感じさせてしまってるんです。でも、ありがたいです」
「言うても、あいつのことや、名前やなかったらここまでしないはずやで」
「え、」
「ま、名前は花宮に感謝せんとな。何があったかは知らんけどな、あいつかて名前んこと大切にしとるんやから、それに応えなあかんで?」


花宮くんに、大切に。
あの日から毎日、ずっと私につきっきりで、嫌味もたくさん言われたけれど、確かに私は、花宮くんに大切にされてたんだ。
それなのに私は、今までなんにもそれに応えてこられなかった。私は今までのことに、応えていかなきゃいけないんだ。

「頑張ります、私」

全身が痛む。傷だらけで、汚くて、本当にぐちゃぐちゃで。
こんな私だけど、頑張らなきゃいけないんだ。花宮くんのためにも、頑張らなきゃいけないんだ。


「名前の笑顔、久々に見たわ。笑っとったほうがええで。」

本当にいつぶりだろう、明るい表情になれたの。辛い顔ばかり、してられない。


20131028

prev next

 



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -