やりやがった。今まで恐れてきたことを、遂にやりやがったのだ。
ほんの30分程前。俺はあの後朝礼に出席し、長く退屈な教師の話や各部の表彰を聞き流していた。
頭の中では、名前のことしか考えられなかった。
昨日。あいつが一人で居ると聞いて駆けつけた先には、今吉サンが居た。
名前は今吉サンが居たことで、俺が居ない状態でも取り乱すことなくいられた。
すごく、ものすごくイラついた。
そもそも、名前が今吉サンに対して警戒しなさすぎる。
あの人が悪い奴とは言わないが、どうにも読めない。
人の嫌がることさせたら叶わないし、人の考えていることは大体見透かしている。
信用できないっつーのが第一の理由だった。

ただそれを抜いてもどうにも煮え切らないような気がして、それが昨日からのイライラの原因だった。
夜が明けてもそれは収まらず、そのままかなり傷だらけになった名前を見て、我慢できなくなった。

軽率過ぎた。
いつもならそんな考えなしにあいつを突き放すような真似は絶対しないのに。
自分の甘さに、腹が立った。




朝礼中に、職員室に残っていた教師一人が、慌てた様子で体育館に入ってきた。
館内の教師に何かを話すと、教師達は顔色を変え、急遽朝礼を中断、生徒達は体育館に待機させられた。
どうしてかはわからなかったが、心臓の音が妙にうるさくなった。嫌な、予感がした。


嫌な予感は、皮肉なことに大抵当たってしまう。
救急車が近付いて来る音が聞こえ、俺は一人体育館から飛び出した。
救急車は学校の敷地内に入ってきた。俺はその後を追う。
救急車が止まったのを確認し、俺はその先を行く。
嫌な予感は、もう確信に変わっていた。


そこに居たのは複数の教員達と、横になり血を流す名前の姿だった。



20130309

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