episode00-02


episode00.『僕と森の長い一日02』

たどり着いた場所は神社だった。
真っ暗で人の気配が殆ど無かったせいか、僕は急に不安になって半泣きになった。
「坊ちゃん、坊ちゃん、こっちだよ。」
すると後ろから鱗のようなざらざらした感触がした。
おそらく、氷流の手だろう。
「ひ、氷流、紅ちゃんは?」
「外。こっちに扉あるからね。」
氷流に腕を引っ張られながら暗闇を少し歩くと一筋の光が見えた。
氷流が扉を開くと、そこは森ではなかった。
「お、氷流、滝無。無事か?」
「無事、無事。」
紅ちゃんは何故かお賽銭箱の上に乗っていた。
それはまだ良いとして、僕が驚いたのは、目の前の人が平然とお参りをしていることだった。
「えっ、ちょ、氷流…」
「しーっ、坊ちゃんは喋るとバレちゃうからそこに隠れててね。」
そう言われ、お賽銭箱の後ろに身を隠す。
「行ったぞ。」
紅ちゃんが人が帰ったのを確認すると二人は僕と同じようにお賽銭箱の後ろに座った。
「滝無、私と氷流は今人間には見えてないんだ。」
「僕には見えるよ?」
「その理由は滝無が大きくなってから話そう。」
「なんで見えないの?」
「坊ちゃん、俺達が神様だったり、妖精だったり、神の遣いだったりするのは解るよね?」
「うん…。紅ちゃんは花の妖精で、氷流は人魚でしょ?」
「あ…まあ…間違ってはない…。」
「説明するのが面倒だな…。」
「えっとね、坊ちゃんの家の近くの神社を通ってここに来るとね、俺達は普通の人には見えなくなるんだ。」
「じゃあなんで僕は見えてるの?」
「さっきも言ったがそれは滝無が大きくなったら話す。それまで待て。」
紅ちゃんはそれだけ言うと、周りをきょろきょろと見回しはじめた。
「紅ちゃん?何してるの?」
「ん?ああ、人を探してるんだよ。」
「人?」
「そ。お、あそこに村があるぞ。」
紅ちゃんは少し遠くを指差しながら僕らに嬉しそうに言った。
「村?前来たときは無かったんだけどなぁ…。」
「氷流が以前来たのは百年ほど前だろ?流石にこっちの様子も変わってるさ。」
「そうか…よし、坊ちゃん、紅、村へ行こう。あの人もいるはずだよ。」
「ああ。」

それから僕らは村へ行った。
僕は紅ちゃんや氷流の影響で周りには見えてないようだった。
少し村の中を歩いてると、小さなお地蔵様を見つけた。
「お、ここだな。」
紅ちゃんと氷流はお地蔵様の前で止まり、また周りをきょろきょろと見回した。
すると僕はふわっ、と誰かに後ろから抱きかかえられた。
「うわあっ!」
「滝無!?」
「坊ちゃん!?」
紅ちゃんたちは僕の叫び声を聞くとくるっ、と僕の方を向いた。
「やあ、君たち来てたの?」
優しい声がした。
振り向くと、左目が前髪で隠れているにこにこした男の人が立っていた。
「き、京…。」
「この子って峯のお孫さんかな?」
「ああ、そうだ。」
「やっぱり?目とか髪質とか峯そっくりだね。」
「お、お兄ちゃん誰…。」
おずおずと聞くと、お兄ちゃんはすっと僕をおろしてにこっと笑うと
「京だよ。この近くの神社に祀られている神様だよ。」
「京…?京も神様なの?」
「滝無、そいつは私たちの森を作り出した神だ。」
「白樺の森の?」
「ああ。彼がいないと森の色んなことが崩れてしまうんだ。」
「まあねー、いなくなることなんて無いと思うけどねえ。」
紅ちゃんたちの会話が終わると僕たちは帰ることになった。

「…あれ?」
「どうしたんだ、紅?」
「……拙い、帰れない。」
!?

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