02


U.『友達』

「君は友達がいないのかい?」
「いるぞ、普通に。」

西海道がうちの高校に編入してきて一週間が経った。
クラスメートたちは最初は西海道が何故眼帯をしているのかが気になっていたらしいが、今は全く触れない。
一体全体、西海道は眼帯のことを何と言ったんだ…?
「なぁ、西海道。」
「ん?なんだい?」
「お前眼帯のことめっちゃ聞かれてたけど…何て言ったんだ?」
「ああ、これかい?」
西海道はおもむろに右手を眼帯のしてある右目にあて、かっこいい(と本人が思い込んでる)ポーズをした。
「中二病、とだけ言っておいたよ。」
まあ、強ち間違ってないな。
「君が常日頃から私のことを中二病、中二病と口うるさく言うからね、意味を調べたんだ。」
あ、中二病の意味わかってなかったんだ。
「意味を知ったときは驚いたよ。だって私にぴったりだったからね!」
しかもプラスの意味で捉えてる…。
どんだけポジティブ思考なんだこいつは。
「さて、滝無。」
「な、なんだよ。」
「話を戻すが、君は友達がいるのかい?」
「いるって言ってんだろ…。」
小さな頃から一緒なのに信頼感が皆無なのか…。軽くショックだ。
「いるなら紹介してくれないか?」
「……は?」
「いや、だから…」
「あーっ、はいはい、わかったわかった!」
つまり、
「お前友達できないんだな?」
「っ…!」
ははーん、そういうことかぁ、そうかぁ、と俺はわざと西海道に聞こえるように喋った。
まあこんな奴、あんまり関わりたくないよなぁ、とクラスメートの気持ちを心の中で代弁しながらにやにやと西海道を見た。
「そ、そんなにやにやしなくてもいいじゃないか!」
「いやぁ、まさかお前にもそんな一面があるとは思わなくてさ…ふっ…」
「早く紹介してくれよ!」
「ふ…はいはい。」


そんなこんなで俺は親友に会うために隣のクラスに行った。
「杜和。」
親友の名前を呼ぶと、彼はすぐになんだよ、といつも通りの返事をし、西海道に目を向けた。
「あぁ、お前が転校生?」
小さい西海道と背の高い親友―――日暮 杜和が並ぶと身長差がもの凄い。
多分30pくらい違うのではないか、と思う。
まあ、端から見れば俺もけして小さいわけではないから―――むしろ背は高い方だから―――西海道と並んでると結構な身長差はあるだろう。
「ん?君が滝無の友達かい?随分と大きい友達だねぇ。」
西海道は首をほぼ真上に上げながら杜和をじろじろ見ている。
「杜和、こいつ一週間前に転校してきた…」
「あぁ、自己紹介なら自分でするよ。」
すると西海道はこほん、と一度咳払いをして自己紹介をし始めた。
「西海道紅だ。よろしく頼む。」
そう言って西海道はすっ、と手を杜和に差し出した。
しかし杜和はその手には触れず、ふいっとそっぽを向いて
「……日暮杜和。」
と呟くように言った。
まあこういう奴だから仕方ない。
仲のいい俺といてもあまり喋ることが無い。
「ふむ…君は面白い奴だな。手を差し出されても握手をしないのか。」
「別に…握手する義務は無い…。」
「よし、じゃあ私と友達になってくれ!」
あ、やっぱり友達欲しかったんだ…。
どや顔する西海道を横目に、杜和は俺の方を向いてぼそりと呟いた。
「…翔とは友達なのか?」
「ん?ああ、幼なじみなんだよ、そいつ。」
すると杜和は満足気に
「翔の友達は俺の友達だからな。」
と言い、西海道の頭を撫でた。
「おお!やったぞ滝無!友達できたよ!!」
西海道は頬を紅潮させながら子供のようにぴょんぴょん跳ねた。
こいつのこういうところは俺が小さいときから変わらない。
「改めてよろしく頼む!日暮!」
「杜和でいい。」
「い、いいのか…!?」
「うん。」
「じゃあ、杜和!」
杜和が俺以外で名前呼びさせるなんて珍しいな…。
こいつは協調性やコミュニケーション能力などといった対人関係の能力が欠けている方なのに、初対面の西海道とこんなにも打ち解けるとは…。
「では流れ的に滝無もこれからは翔だな!」
「はあ!?なんでだよ!」
いきなり話をふられて驚いたが、それ以上に西海道に名前呼びされることに驚いた。
「杜和と翔だな、よし!」
「よしじゃねぇよ!」
「よかったな、翔。」
「杜和…お前まで…!」
すると西海道が俺と杜和の方を向きながら
「わ、私のことは紅でいいんだぞ…?」
と期待に満ちた表情で言った。
答えはもちろん、
「絶対呼ばねえ」

こうして西海道は初めて俺以外の『友達』を作った。

「ちょっと私、峯ちゃんに自慢してくる。」
「それくらいで自慢すんな。」

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