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side:レオ











ライブラに入ると誰もいないと思ったが、奥からギルベルトさんが出てきた。



「奥様…!ナマエ様よくぞご無事で…!」
「おくさま?」
『あぁギルベルト!久しぶりね、お元気だった?』
「はい、変わりなく。ナマエ様もお変わりありませんか?」
『勿論よ!』
「お疲れでしょう。アールグレイティーでよろしかったでしょうか」
『嬉しいわ、貴方の入れるアールグレイ大好きなの!』
「恐れ入ります」



その時だ。僕らの後ろにあるドアが開く。



「やぁナマエ!飛行機は遅れてると聞いたが随分と早いご帰還だったね!」
『そうよ、遅れてたの。機材の調整で飛ぶのは八時間後だなんてとんでもないでしょう?
どうしても早く私の可愛いテディベアちゃんに会いたかったから、小型飛行機を買い取ってそれで帰ってきちゃった』

「ザップさん、ナマエさんってお嬢様とかですか」
「ナマエさんの先祖は貴族らしいんだわ」
「あぁ、なるほど」



なるほどとしか言葉が出なかったというのが正しい。品のある話し方や仕草、それから笑い方が普通の人とは違ったからなんとなく分かっていたが。



「相変わらずだね。直近ではどこにいたんだっけ?」
『フランスよ』
「滞在先はどうだった?」
『まぁまぁね。でもパリのパンケーキはふわふわで美味しかったわ。勿論ギルベルトのパンケーキには負けるけどね?』
「それは光栄です」



ふふ、と笑うナマエさんにギルベルトさんは子を思う親のような穏やかな視線を向けている。

昔ながらの知り合いとかなのかな。



ところで、

目の前でハグ、そして頬にキスを交わすナマエさんとスティーブンさん。

“ 私の可愛いテディベア ” はスティーブンさんのことだろうか?



「あ、あのナマエさんはスティーブンさんの恋人とかですか…?でも奥様ってことは、結婚してるとか……?」



するとその場にいた皆から一斉に笑いが溢れた。



「違ぇよ!」



ザップさんは腹を抱えて大爆笑した。ヒィヒィ言って。無視だ、無視。



「面白いな少年!
そうか、ナマエが僕の妻か!」



スティーブンさんもナマエさんの肩を抱いて笑う。



「さぞ坊ちゃんがジェラシーを抱かれることでしょうな」



ギルベルトさんでさえも楽しそうに微笑んでいる…!

ナマエさんは



『私は彼一筋よ!』



と誇らしげに胸に手を当て言った。
彼って誰だ。




『そういえば私の可愛いテディベアはどこ?』
「あぁ、彼なら」



坊ちゃん、とギルベルトさんは言っていた。

と、いうことは…。


その疑問はすぐに解かれることとなる。



スティーブンさんが言葉を言い終わる前に勢いよく開かれ、半壊するドア。



「外に、彼女のランボルギーニがあったのだが」



現れた我らが最強の頭領はすぐに一人の女性を見つけた。



「ナマエ…!」
『クラウス…!あぁ私の愛しい人!』



ナマエさんの細い腕がクラウスさんの太い首に回る。スティーブンさんの時とは比にならない、熱い抱擁。



『どれだけ貴方と過ごす時間を恋しく思ったか!』
「あぁナマエ、私もだよ。今度はどのくらいこっちで過ごせるんだ?」
『一週間くらいかしら…
その間、たっぷり貴方との愛を育みましょうね』



見つめ合う二人の視線は情熱的で、もしも彼らの間にチョコレートがあったのならお互いを見つめる視線だけで溶けてしまうだろう。



「まるでブロードウェイのミュージカルみたいですね」
「ハッ、馬鹿言え。あの人達のイチャイチャ具合はあんなもんじゃねえぞ」



なんてザップさんは言うけれど。

そりゃあ久しぶりに夫婦が会えば、イチャイチャもするだろうに。



「ナマエ、君の話を聞かせてくれ」
『もちろん、いくらでも話すわ。でも貴方と離れたくないの。そのまま抱っこして連れていってくださらない…?』
「…皆がいる前で煽るのはやめてくれ」
『あら、私は貴方と肌をくっつけていたいだけよ…?』
「そういうところを言ってるんだよ」



……確かにもうすでに新婚みたいにお熱い二人にはお腹いっぱいだ。うん。



「レオが僕とナマエを夫婦だと勘違いしていたよ」
「え!?あっ、それは…!」
「…勘違いするようなことを二人はしていたのか」
『再会のハグをしただけよ。ねえ?』
「うん。そもそも僕にはナマエのようなじゃじゃ馬を飼い慣らせないよ」
『失礼ね』
「スティーブ。彼女を“ 飼い慣らす ”等家畜のような扱いはしないでもらいたい」
「おっと。それは悪かった。ナマエ、不快な思いをさせたかな」
『平気よ』
「君が平気でも、私は大切な人がぞんざいに扱われるのは嫌だよ」
『クラウス……』
「俺帰っていいっスかあ」



この時だけは、
ナイス。ザップさん。