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side:レオ







ライブラのビルの近くに見慣れない車が停まっていた。

それが以前ニュースで見た世界で三台しか生産されていないと言われるあの、ランボルギーニ・ヴェネントだと気付き、気持ちが高揚する。

ザップさんに興奮冷めぬ間に話すと、鼻をほじっていた彼でさえもその凄さが分かっているのか「マジか」と言い一緒に見に行った。

だが車を見るや否や、ヤベェと顔面蒼白になる。



「ヤバイですよね!俺初めて見ました!1台300万ユーロらしいですよ!」
「いやそうじゃねえよ。あのナンバーはやべえよ。」
「知り合いですか?」



ザップさんがごくりと唾を飲む。



「あの人のだ…、あの魔女が来る……」
「は?魔女?」



ついにイカれたようだ。



「レオ。あの人はな、雷を操る魔女だ。あと昔から顔が変わんねェんだ…」
「童顔なんですか?」
「童顔なんてもんじゃねえ!
…俺がガキの頃から変わんねえんだぞ!存在がホラーだろ!」
『誰がホラーですって?』
「うおおっ!!」



突然目の前を電気の粒がバチバチと弾ける拳が横切った。それを防ぐのはザップさんの足。

一瞬の出来事に何も付いていけなかった。



『相変わらず見事な足癖ねぇ、ザップちゃん』
「ナマエさんも相変わらずで…」



慌てて足を下ろし、爪先を揃えて背筋を伸ばすザップさんを見て楽しそうに笑っているこの人が、ザップさんの言う“ 魔女 ”なのだろうか。

その人は血色の良い唇が艷めく、とても美しい女性だった。

そしてサファイアのように蒼く丸い長いまつ毛に覆われた瞳がゆっくりと僕に向く。



『あら!貴方ね!神々の義眼を持つ坊やは!』
「ぅぶっ」



突然、両手で僕の頬をむぎゅっと包まれた。



「な、なんれほれを(何でそれを)」
『牙狩り本部でも有名よ、貴方の目!
私はナマエ。ナマエ・A・ワーグナーよ。坊やのお名前は?』
「レオです。レオナルド・ウォッチ。
と、とりあえず…、手を離して貰ってもいいっスか…?」
『あら、ホントね。ごめんなさいね、私つい嬉しくなって。ふふ!』



軽やかに笑う魔女、ナマエさんの笑った顔はとても愛らしくて、それを見て益々緊張感のある顔をするザップさんの気が知れない。

これがナマエさんとの初めての出会いだ。