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名前がゾルディック家に嫁いで間もなく、彼女直属の執事を付けることにした。が、彼女は

「必要無いわ。自分のことは自分で出来るもの。今までだってそうしてきたんだし。」


と言っていたが、ボディーガードの意味で付けておけと言うと渋々了承してくれた。名前と年端の近い女がいい。男は駄目だ。男には繊細な名前の世話を任せられない。それに、名前の魅力に気付いて惚れでもしたら、俺はそいつを殺してしまうだろう。女であり、加えて名前を守れる戦闘力が必要だ。というわけで、名前と年端の近い女として、ツボネを名前の執事にしてみた。


「名前様、なんなりとこのツボネに仰ってくださいね」
「…と、言われてもねぇ」
「何でも構わないんですよ。お買い物中、愛想の悪い店員等はいませんでしたか?私が消して参ります」
「まぁ。この家の執事はそんなこともお仕事の内に入ってるの?大変ねぇ」
「滅相もございません。私は名前様の執事になれて誠に嬉しく思っておりますので」
「あら、ありがとう。リップサービスでも嬉しいわ」
「リップサービスでも何でもございませんよ。あのゼノ様が自らお選びになってこられ、しかも何年も片想いの期間を経てご一緒になられた方なんて…」


年頃の女の子そのものに、まるでロマンス映画の感想を言うようにうっとりと話すツボネはいつもの無機質なロボットのような彼女ではなく、人間らしかった(生きてる人間にこんな事言うのは失礼だけど、いつもが無機質すぎるのよ!)。


「ツボネは冗談も上手いのね」
「冗談等ではございません!…確かにこの屋敷にはまだ名前様を良く思っていない者もいます。ですが、私はゼノ様が、あのゼノ様が自らお選びになり、一般人でありながら試しの門を開ける努力をなされた名前様の健気さが好きなのです!」


そんなふうに思っていたなんて思いもよらず、阿呆のように口をポカンと開けるだけの私に気付いたツボネは突然慌てたように頭を下げた。


「も、申し訳ございません。少し喋り過ぎました」
「いえ、いいのよ!私は感情のある貴女の方が好きよ。私の前では出来るだけ素の貴女を見ていたいわ」
「有り難きお言葉でございます」
「これからよろしくね、ツボネ」
「はい。末長く、よろしくお願い致します」


こうして名前とツボネは長い仲になることになる。名前はツボネをとても信頼しており、ツボネも名前とは心を開いたように話をする姿を今もよく見かける。


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