夜の風は思ったよりも、俺の頭を冷静にしてくれた。 恋は盲目とはよく言うものだ。 よく考えれば、こんな綺麗なお嬢さんに寄り付く男は多いはずだ。良家の者なら婚約者だっていてもおかしくないし、結婚だってしていてもおかしくない。 今更になって理解するとは、俺もとんだ馬鹿野郎だ。あぁ、俺はなんて馬鹿なことを。 急に襲いかかってきた劣等感に俯く。名前は俺の顔を覗きこむようにして話し始めた。 「私、こんなふうに気持ちを伝えて貰ったのは初めてで…貴方からのお気持ちが嬉しいのは確かなんです。だから、もう少し考えさせて下さい」 ゾルディックの名前を持つことを伝えてもなお、俺の目を見てそう言ってくれた彼女は微笑んでいた。 頬には魅力的な笑窪。やっぱり君が好きだ。 |