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「突然で悪かった。君の隣にいつもいるボディーガードの目が向いていない今しかないと思ったんだ」


彼女は一体何の事だとでも言いたげに眉を下げ困惑した表情をしている。

あぁ、そんな顔しないでくれ。見たいのはそんな顔じゃない。

だけどもうここまで来たらやるしかない。気持ちを整えるように息を吐き、そして伝えた。


「君が好きだ!俺の妻になってくれ!」


彼女は目を丸くする。そして薄らと開いていた口からやっと言葉が出る。


「お気持ちは嬉しいのですが、初めて会ったどこの誰かも知らない方と結婚は…」


そうだ。俺は名も言ってなかった。


「俺はゼノ=ゾルディック。ククルーマウンテンの、ほら!今君が見に来ていたあの門扉の奥に住んでいる…」
「ゾルディック…!」


彼女は再び目を開いた。そして素早く目を掌で隠す。小さな掌も、桜色の爪も全てが可愛らしい。いや、それよりも……


「…何をしてるんだ?」
「わ、悪いことをするとゾルディック家の者に目を取られると、昔から父や祖父から言われてきましたので!」
「…俺はそんなこと君にはしないし、仕事以外で無害な者に手を出す趣味もないぞ」
「まぁ、そうでしたのね」


彼女は少し躊躇しながら腕を下ろす。…そりゃあそうだよな。ゾルディックの名を聞けば、誰だって嫌悪感を抱かない。


「俺達が何をやっているか、君は知ってるよな」
「暗殺、でしょう?」
「そう。でも、あれは仕事だ!好きでやってるわけじゃない。本当だぞ!?俺は無駄な殺しは嫌いだ」


俺は一体何を必死になっているのだろう。


「やっぱり、見ず知らずの貴方の想いを受け取ることは出来ません。ごめんなさい」


俺の初恋はあっさりと玉砕した。