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次の日もその次の日も彼女“名前”は、観光客と共に我が家の門扉の前に来ていた。うちにそんなに興味があるのなら今すぐにでも俺の妻になればいいのに。我が家の中まで何処も彼処も部外者は誰も見たことがない部屋まで、俺が案内してやるのに。(ちなみに俺は門扉の奥に茂る木々の隙間から彼女を見ているに過ぎないただ男だが。)

彼女が一人になったら、その隙にこの気持ちをすぐにでも伝えるのに。しかし、彼女はそれなりの身分らしく、隣にはいつもボディーガードの男がいる。一般人のような姿だが、それなりに念や体術を身につけているようでいつも周りに目を光らせている。

昨日俺は彼女に近付こうと尾行し、別荘を突き止めたまでは良かったが、その男に気配を気付かれ、彼女の部屋まで近付けなかった。


彼女を盗み見てはただ、ため息が出た。あの澄み切った佇まい、丁寧で可憐な仕草、向日葵のように輝く笑顔、全てが愛しく完璧だ。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とは、彼女の為に作られた言葉なのだとここ数日で思い知らされた。昨日の今日で出会った女にここまで惚れられるのかと聞かれれば即答イエスだ。運命等気にしたことが無かったが、彼女こそ俺の運命の相手だろう。

自分がここまでロマンチストだとは知らなかった。恋とは全てを狂わせる。


「名前様、旦那様からお電話が…」
「出て構わないわよ。私は大人しくガイドさんのお話を聞いていますから」
「動かないで下さいよ」
「もう、子どもじゃないのよ」
「だと良いのですがね」


ボディーガードが名前さんから視線を外した。今がチャンスだ!俺は仕事の時よりも速い本気のスピードで彼女の体を抱き上げ、


「失礼!」
「わっ」


路地裏へと連れ込んだ。つい仕事の時の癖で口元を抑え、身柄を拘束していることに気付き、慌てて解き放つ。彼女は怯えていて、小動物のように体を震わせていた。


「す、すまない!悪気は無いんだ!」
「…悪気が無い人は、口など塞ぎません…」
「そ、そうだよな、ハハ…」


全くもって彼女の言う通りである。