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歳の近いアルカと俺はよく遊び、昔から俺達子どもと遊んでくれるのは執事よりもばあちゃんが多かった。
俺がアルカのことに気付き、ばあちゃんに話した時、ばあちゃんは「やっぱり、キルアちゃんも気付いていたのね」と核心づいたように頷いた。そしてこれは俺とばあちゃん二人だけの秘密にしようと決めたんだ。



「おばあちゃん、ぎゅーってして!」
「ふふ、はいはいアルカちゃん」



アルカは甘え上手だったし、ばあちゃんもそれに答えるように抱きしめる。ばあちゃんはアルカだけではなく「キルアちゃんもおいで」といって一緒に抱きしめてくれる。その時間が好きだ。



「おばあちゃん、アルカにちゅーってして!」
「はいはい、ちゅー」
「おばあちゃん、おててつないでー」
「えぇ、いいですよ。アルカちゃん、おばあちゃんにも頬っぺにキスしてくれる?」
「もちろん。ちゅっ」



最近分かったことは、アルカは俺やばあちゃんには酷なことは求めず、執事等を挟む。アルカが初めて人を殺めた時は驚いたが、二度目に“お願い”で殺めた時、ばあちゃんは苦しそうな顔をしていた。



「…ばあちゃん。アルカのこと、親父達に話した方がいいかな」
「…全てを話せばアルカちゃんは仕事の道具として利用されてしまうかもしれない。アルカちゃんのお願いを三回聞けばこちらのお願いを聞いてくれること。それだけをシルバ達には伝えましょう」



ばあちゃんが実の息子である親父のことさえ冷たく言うのはどこか面白かった。家族の中では珍しく義理とか伝統とかだけじゃなく客観視出来る人だったから、親父や爺ちゃんのことも「仕事モードのあの人達のことは知りません。私が好きなのはお家モードのあの人達よ」と言っていたくらいだ。



「じゃあ俺の…」
「…それは黙っておきましょう。キルアちゃんとおばあちゃんの秘密にするの。そうすれば何かあった時の為に、アルカちゃんを守ることが出来るかもしれない」



その時はまだアルカが地下室に閉じ込められることは決まっていなかった。だけどばあちゃんは「何かあった時の為に」と話した。

勘でも、核心だったとしても、幼い俺は親よりも大好きなばあちゃんに言われて「分かった」以外の選択肢を選ばなかった。




***



ドアのノックの音がして膝に乗せたブランケットをそのままにどうぞと声を掛けた。



「ばあちゃん…俺さ、家を出ようと思うんだ」



キルアちゃんは私の手を握りながら静かにそう言った。



「まぁ。キルアちゃんが珍しく難しい顔をしてるからお腹が痛いのかと思ったわ。お菓子の食べすぎよって怒ろうと思っていたのに。ふふ」
「わ、笑うなよ!
俺結構勇気出して言ってんだぜ!」
「ふふ、そうなの。お父さんとお母さんには話したの?」
「親父に話したら反対されるに決まってる。ババアなんて論外だよ。奇声上げるだけ」
「なら一番におばあちゃんに話してくれたの?」
「うん」
「ありがとう。
でもキルアちゃん、お母さんのことをそんな呼び方するのはダメよ。おばあちゃんの前でそんなふうに言うのはやめてちょうだい」
「分かった。ごめんなさい」



素直に謝ることの出来るこの子は大人びているけれど、素直で可愛くて私からしてみれば、生まれてオムツを替えていた頃と変わらない、可愛い可愛いキルアちゃん。



「ばあちゃんは、俺が家を出ること反対する?」
「そうねぇ。キルアちゃんが居なくなるのは寂しいわねぇ。
でもおばあちゃんは貴方の気持ちを大事にするべきだと思うわ」
「…そっか」
「キルアちゃんなら大丈夫よ。大丈夫。おばあちゃんの孫だもの。上手くやれるわ」



柔らかい髪の毛はゼノさんやシルバと同じ。愛しい愛しい可愛い子。
私の全てを捧げてもいい。



「アルカのことを頼めるのはばあちゃんだけだ。アルカに何かあったらすぐに教えて」
「どこに行くかも教えてくれないのにすぐ教えて、だなんて。ワガママな子ね、キルアちゃん」
「う…!」
「心配しなくて大丈夫よ。アルカちゃんのことはおばあちゃんが守るからね」



どうか優しいこの子にたくさんの幸せが降り注ぎますように。




2021.02.26
(フリリク:えくぼお嬢さんとキルアくん)