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ついに私は子どもを授かった。


ゼノさんは涙を流すほどとても喜んでくれたものだ。


食事は皆の毒入り料理とは別に、私用の食事を作ってもらうようになった。ゼノさんは



「もし間違って毒入りになったらどうする!」



なんて食事は自室で取るように言ったけど、一人で食べるお食事ほど不味いものは無いから、最後まで皆と同じテーブルで食事をした。







赤ちゃんの性別が男の子だと分かると、家族は益々喜んだ。

暗殺業といえど、ゾルディック家も代々受け継がれる由緒ある御家だ。ずっと跡取りが気になっていたのだろう。


ゼノさんは家族のあからさまな態度に怒っていたけれど、私は本当の家族になれたような、本当の意味で受け入れてもらえたような、そんな気がしたので嬉しかった。





***





日に日に大きくなっていくお腹に私は幸せを感じていた。その反面、この子もゼノさんやお義父さま、お爺様と同じように暗殺者の道へ進むことになる。


そう考えると、なんだか切なくなった。





そんな私の気持ち等知った事ではないと言わんばかりに、

嵐の晩、

私とゼノさんの初めての赤ちゃんは産まれた。



名前はゼノさんが三日三晩、寝ずにひたすらに考えてくれた。



『初めまして、シルバ 。
私達の元に生まれてきてくれてありがとう』



私に抱かれ小さく寝息を立てる坊やを見て、ゼノさんは涙しながら



「俺の子を産んでくれてありがとう」



と私の額にキスをした。

あの時のゼノさんの唇のぬくもりを
私は一生忘れない。





***




シルバが生まれてからというものの、名前は以前よりも自分の気持ちを表すようになっていた。


ゾルディック家では代々子どもの世話は子ども直属の執事がすることになっている。
俺も幼少期は、暗殺については親父や爺に習ったが、その他では直属の執事に育てられた記憶がある。


シルバも直属の執事に育ててもらうのだろうと俺は勝手に思っていたし、その話が執事長から出た時もそれで構わないと俺はシルバの直属の執事になる者に伝えた。

けれどその時名前は、



『私が育ててもいいのでしょう?』



と生まれたばかりのシルバを抱きながら言った。

確かにそういう“しきたり”というだけで、母親自身が育ててはいけないというルールは無い。



「奥様自らを煩わせるような事はなさらなくても結構なのですよ」



こうなった名前の頑固さを知らない当時の執事長の男はあくまで冷静に、淡白に伝える。
が、それは名前の感情を掻き立ててしまったようで普段なら緩やかにカーブを描く眉毛がピクリと動いた。



『あら。
十月十日お腹に入れて、痛めて産んだ子なのに、煩わしいなんて思うものですか』
「ですが…」
『ゼノさん、貴方からは何かあって?』
「む…
そうだな。ゾルディック家に産まれた以上、仕事の事は俺や爺さんが指導していくぞ」
『えぇ、構わないわ。
その上でシルバは私の元で育ててもいいわね?』



名前はにっこりと愛らしい笑窪を俺に向ける。



「…あぁ、構わん」
『ありがとう』



彼女の口元は穏やかに弧を描く。その表情があまりにも愛おしく、俺までつられて口元が緩んだ。

何年経ってもこの笑顔に俺はどうしても逆らえる気がしない。



「奥様、“えくぼ作戦”はどうでしたか?」
『ばっちりよ!
ツボネ、あなたの言う通り笑顔を見せたら折れてくれたみたいだったわ!』





2020.12.24