私たち夫婦のかたちは 私が働き、おそ松が家事を行う。 最初は私が家のことも行っていたのだが、ある日テレビを見ていた彼が急に「料理始めるわ」と言った。気まぐれ屋さんの彼のことだからその場限りだろうと思ったが、次の日の朝、お味噌汁の香りがした。他でもない、私より寝坊助だったおそ松が作ったのだ。 元々器用で要領のいい彼はニートであることの利点、時間が十分にあることを利用して料理の腕をめきめき上げ、ついには私よりもレパートリーを増やした。しかも最高に美味しい。 料理を始めたことで買い物に行ってくれるようになった。 それから洗濯もしてくれるようになり、 ついに彼は立派な主夫となったのだ。 妊娠が分かってからというもの、彼はますます私に家事をさせなくなった。 『おそ松、何か手伝おうか?』 「いやいやいや、お前は自分の体を大事に座ってな」 『でも、』 「いいから!!ほら!テレビでも見てろ!!」 あまり渋るとキレてくるので私もあまり言わないが、彼は過保護すぎると思う。 『どう、イッチ』 「いや…相談する相手間違ってるでしょ…」 仕事帰り、公園を通って帰っていると六つ子の四番目、一松に会った。声を掛けると「げっ」と鈍い声を出したが、無理やり話を聞いてもらったのだ。 『私、まだ全然動けるのに』 「それ、直接本人に言えば」 『言っても聞かないからイッチに相談してるんでしょ』 「まぁ確かに…」 大切な猫とのふれあいタイムにお邪魔してるにも関わらず、そこで知らねえよと押し返さないのが一松の優しさだ。その優しさに漬け込んでるのが私なのだと思うと胸が痛いのですがね。 「…兄さんは、あんたが大切なんだよ」 『お…?』 「大切な気持ちがでかいほど、どう扱えばいいのか分からないんだよ」 一松の指が猫の喉元を撫で、猫は気持ちよさそうにごろごろと鳴く。六つ子ともなれば、気持ちも分かるものなのだろうか。 「いーちまーつ!猫缶買ってきてやったぞ〜!」 聞きなれた声の方を向くと、近づいてくる見慣れた赤いパーカー。 『え、ちょ、一松』 「兄さんが猫缶買いに行ってるって言ってなかったっけ」 『言ってないよ!!』 「は!?こうめ!?おま、何で一松といるんだよ!」 『帰り道に一松と会ったの!』 「普段ここ通らねぇだろ」 『気分的に公園通りたかったの!』 「はあ!?嘘つけ!!」 『嘘じゃないってば!!ねえ一松!!』 「!?お、俺を巻き込まないでくれる…」 「そうだ!一松を巻き込むな!」 『うるさいよ!』 「二人ともうるさいから。早く帰りなよ」 やっぱりおそ松が私を大切にしてるなんて、信じられない!! |