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これはデンジと名前が初めて出会った、少し前の話。




討伐目標がいるとされるビルの中。パワーとデンジは強行突破で窓から入り込んだ。

中は無人で荒れ果てている。薄暗いアスファルトに二人の足音だけが響く。

その時だ。


『ちょっと君達〜 ここ、立ち入り禁止だよ』


後ろから声がして振り返ると、そこには黒髪の女がいた。デンジ達と同じようにスーツを着ている。


「俺ァ4課だ!!」
「わしもじゃ!!」
『あれ、なら私も。同業者か』
「「あ。」」
『一緒だね。ごめんね、勘違いしちゃった』
「ア……」
『“斧の悪魔”の討伐だよね?』
「……スキ」
『あれ、聞いてる?』
「デンジが壊れとる!!叩いて直せ!!」


デンジは名前が笑うその優しい表情に、惚れた。



***


「おい、名前」
『はい』
「何だそれ」
『拾った』


アキは機嫌悪そうに眉間にシワを寄せてその光景を見つめる。

名前の両腕にはデンジとパワーが腕を絡ませていた。あの後、名前とデンジ達は共に悪魔を倒した。そして喫茶店に行き、コーヒーの美味しい飲み方を教えてやった。

デンジとパワーは名前が大好きになったのだった。


「俺ァもう名前チャンのおかげで大人になったぜ!なぁパワー!」
「そうじゃ!わしはコーヒーの王じゃ!」
『ミルクとお砂糖たっぷり入れてあげたの』
「…、
名前。あんまり悪魔と馴れ合うな。おいデンジ、名前のことを馴れ馴れしく呼ぶな。お前より先輩だ」
「ハア〜!?何でだよ!おめーに関係ねェだろうがよォ!あ、もしかしてコイビトか!?
なぁ、名前ちゃんとアイツってコイビト!?」
『ああ〜〜コイビト… なんかそう言われると恥ずかしいけど、うん。そうだね』
「ええ〜〜〜…じゃあ胸揉まれたりしたのか」
『…』
「名前!!何故答えんのじゃ!!!」
『パワーちゃん、そこは分かってよ』
「いいなあ〜〜 …俺、名前ちゃんの尻触ってみてぇ」
『え』
「胸と同じくらい柔らかそう…ちょっとだけ触ってもいいか?」
『ダメだよ。ご褒美じゃないでしょ?』
「俺なんでもするから!!」
『…じゃあ、』
「オイ」


ボカッ


「いってええ〜〜〜!!!!」
『アキ、』
「次名前に手伸ばしてみろ。首から切り落としてやる」
「じゃあそのデンジの血はわしが飲み干してやるからの!!儲けもんじゃ!!ぎゃはは!!」
「くっそー…!」
「名前、勝手に悪魔と契約みてぇなことするな。」
『分かった。心配してくれてありがとう。…でもフライパンで思いっきり叩くのはデンちゃんが可哀想』
「……俺、名前ちゃんにデンちゃんって呼ばれるの好きだ… へへへ」
「気持ち悪い笑い方やめろ。また殴られてぇのか」
『デンちゃん可愛い』
「オイ」



2020.11.20