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ビームくんと喧嘩をして仲直りをした次の日。

その日は内勤で私は書類を自分の机で書いていた。ビームくんには書類が無い。でも内勤の時も「バディ!ナーちゃんと俺!ずっと一緒!」と言って私の周りにいてくれる。


程よく話し相手になってくれるから作業効率も上がって、私としてはとても良い環境で仕事が出来る。(私は感情を表すことが苦手だからよく一人が好き、とか喋り掛けないで、なんて思われることが多いけど、お喋りは好きな方だ)


しかし、今日はいつもと違った。



「…」
『…』
「…」
『…あの、ビームくん。近い』



ビームくんはいつもより私との距離が近かった。

お腹が空いたんだろうか。私が仕事をしているから無言の圧力を掛けているつもりなんだろうか。そうだとしたら効果てきめんだ。



『…おやつ食べる?』
「いらない」
『お腹空いてるんじゃないの?』
「違う」



違った。



「ナーちゃん髪切った」
『え』
「髪無い」



髪はある。



『そうだね。短くなったね』



ビームくんは私の後ろに回り込んで、後ろからじっと私の後頭部を見つめた。

長かった髪はうなじが見えるほど短くなっている。



「俺のせい」



小さく呟いたビームくん。
やっぱりまだ気にしてるのかな。



『そろそろ切ろうと思ってたからいいんだよ』



そう言って振り返るとビームくんはしょんぼりとあからさまに肩を落としているのが分かった。

困ったなぁ。私は人を慰めるのが一番苦手だ。どうやったら相手が笑顔になるかなんて、分からない。



『あー…ビームくん』
「…」
『髪が短くなった私は、どう…?』
「かわいい」
『え』


ビームくんが弾かれるように勢いよく顔を上げた。



「かわいい!!!ナーちゃんは髪無くてもかわいい!!!カワイイ!!!」



ビームくんはぐるぐると私の周りを回りながら同じ言葉を言い続ける。

わ、分かった!もういい、もういいよ!



『あ、ありがとう』
「ずっと言いたい!かわいいってナーちゃんにずっと言いたい!」



よく分からないけど、元気になったみたい。

良かった。私でも人を慰めることが出来た。


いや、人じゃなくて悪魔か。



「ナーちゃんは書くのがお仕事、
俺はナーちゃんに、かわいいっていうのをお仕事にしていい!?」



何それ可愛い。



『ここは人が沢山通る所だから家でならいいよ。今は静かにしようね』
「ハイッ!」



そう言ってビームくんは機嫌良くどこかに泳いで(潜って?)いった。

可愛いのはビームくんの方で、
そして元気付けられたのは私の方だ。


さあ、続きの書類仕事も頑張ろう。



「…星野さん、公共の場でイチャつくのやめてもらえますか」
『いたの早川くん』





2021.07.11
・フリリク