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名前は生まれてからずっと聡明な女の子だ。素直で明るく、誰にでも愛嬌のある笑顔を見せる愛らしい女の子。

魔法の力は“相手が望む食べ物を出せる”ということであまり喧嘩に強い魔法では無かったが、飢餓にはならない。

両親も自慢の娘であった。


利口な娘は両親の言いつけを守り、我儘を言うこと等ほとんど無かったが、一つだけ強く願望を両親に伝えたことがある。それは



『妹が欲しい』ということだった。



名前は両親が共に純血のエリート魔法使いだった為、裕福で何一つ不自由なく、大きな屋敷に暮らしていた。
しかし広い敷地で名前一人が遊ぶには広すぎて孤独さえ感じた。


そんな中、
妹がいたらどんなに楽しいだろう。
小さな手を引いてこの広い屋敷の中を二人で走り回れたらどんなに輝かしい毎日が過ごせるだろう。


名前はそればかり考えていた。
ぬいぐるみや玩具は沢山持っているからもう必要無い。宇井はある時から妹が欲しいと毎日言い続け、





そしてついに妹が生まれた。




初めて見たその子はとても小さくマシュマロのように柔らかで白い。
そして何よりも名前の金色の髪とは違う、無い透き通るような銀色のふわふわとした髪を見て、『天使がうちにやって来た』と幼い名前は衝撃を受けた。




待ちに待った妹、能井を名前は毎日存分に可愛がった。

ミルクも、おしめも、寝かせる時も、いつも名前は母の手伝いを進んで行った。屋敷に響き渡る力強い能井の夜泣きだって名前が抱けばすぐに落ち着く。母親よりも二人の絆は深いものだった。



こんなに愛してくれる姉を、妹が嫌うはずが無い。



名前の能井を愛おしく思う気持ちは十分に能井に伝わっているようで、初めて話した言葉は「名前」だったほどだ。





『私の可愛い能井ちゃん、大好きよ』



名前はそう言って能井の銀色の髪を梳かす時間を大切にしていた。

ずっとこんな時間が続けばいいのに。
名前はそう思っている。




「名前、ずっといっしょにいような!」



能井は名前に髪を梳かしてもらうこの時間が一日の中で特に大好きだった。

強くなって名前を守りたい。
能井はそう思っている。




これは能井が悪魔になろうと決めた理由の一つでもあった。





2020.10.07