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コンコン、

コンコン



「心さーん、煙さんが呼んでますよー
…あれぇ?まだ寝てんのかなぁ…心さーん」



藤田は煙に“心を連れてこい”と言われ、呼びに来ている。何度ノックしても部屋の中から返事は無い。

もしかしたらもう部屋を出ているのかもしれないとドアノブを回すと、


「やべっ!」


簡単に開いてしまった。









中はカーテンから隙間から差し込む日の光で明るかった。


「心さーん」


中をそっと覗くと心はまだベッドにいた。藤田に手を向けて横になっている為顔は見えないが、均等な寝息がきこえる。



「心さーん!煙さんが呼んでますよー!」



藤田は一歩部屋へ入り、心を読んだ。
心は相変わらず深く呼吸をするだけで身動き一つしない。熟睡している。


しかし、

んん…と小さな唸り声がした。
心の奥でモゾ、と何かが動いた。


心はいつも上半身は裸で眠るため何も気にしていなかったが………



藤田はヒヤリと汗をかき、何かを察した。


それもつかの間。
心の奥から布団の擦れる音がして、むくりと身体が起き上がる。




そこに居たのはいつもは艷めくブルネットの髪は寝癖のついたままに、ぼんやりと寝ぼけ眼をした名前だった。


一糸纏わぬその身体は上半身しか見えないが、陽の光のせいかいつもよりも瑞々しく透き通るように見えた。

そして何より藤田が目を離せないのは名前の華奢な身体から重力に沿って瑞々しい果実のような、柔らかそうな二つの…



「名前……まだ寝てようぜ…」
『んー…』


心の太い腕が名前の腰に巻きついて引き寄せられた。

藤田には向けられないような優しい、甘い声で心から話しかけられた名前は、目を擦って寝ぼけ眼の顔を上げる。



パチリ。

目が合った。



藤田は不意にビクリと身体が揺れた。




『あ、藤田くん… おはよう〜…』


自分に気付いたにも関わらずへにゃりと笑った名前に、藤田は不覚にもドキッとときめいた。可愛い。


そんな癒される時間等、煙屋敷でそう続くわけが無い。



「…ア? 藤田?」


心が身体を捻らせ藤田を見た。
途端に目を見開き、心は飛び起きた。



「アァ!!?おま、何で入ってきてんだよ!!!!」
「いや!!ちがっ、!! 煙さんに心さんを呼んでくるよう言われたんですよ!!!」
『ご苦労さまぁ…』
「!! バッ、おま、裸!!!」


まだ寝ぼけており暢気な名前に気付いた心は慌てて名前の体に布団を押し付ける。勢いよく押し付けられた為顔にも掛かり『アブッ』と名前は声が出た。



ゆらりと心は藤田を見る。

その顔は掃除屋の仕事をする時よりも鋭く、藤田の肝を冷やした。


「藤田…お前ェ、名前の裸を…」
「見てません!!!」
「嘘付けェ!!」
「名前さんのおっぱいなんて、俺は見てません!!!」
「見てんじゃねーか!!!今すぐ記憶から消せ!!!
つーか早く出て行け!!!」
「ハッ、ハイィ!!!!」


慌てて心の部屋を飛び出した藤田は息を整える。あまりの出来事にまだ頭の整理がついていなかった。


心さん… 二人の時は名前さんにあんな優しい声で話しかけるんだな……

藤田はふと思い出し、心の人間味を感じた。
さぁ、煙には何と話そうか…


と、思っていたら藤田の背後にある心の部屋のドアが少しばかり開いた。

隙間からは眼光の鋭い心がいる。


「藤田…」
「はっ、ハイッ!」
「この事を口外してみろ…
バラバラにしてホールの沼に沈めてやるからな…」
「ヒイイィ!!!」



俺にも名前さんに向ける優しさを少し分けてくれ!!!



煙には
「眠っていたので起こしてきた」
とだけ伝える藤田なのであった。




「藤田、お前何か疲れてない?先輩、そんなに寝起き悪かったのか?」
「いや、あの… 大丈夫です…」
「?? そうか?」
「はい…… ハハ…」





2020.11.02