白石蔵ノ介
2023/04/04 03:29

 完璧なデートプランを立てて完璧なファーストキスを演出するつもりの白石は、しかし部活が忙しくなかなかタイミングを掴めずにいた。週に数回一緒に帰る通学時間しか取れる時間がない。
 日の沈みそうなもう遅い夕方、伸びる影がふたつ並ぶ。
 今週はあまり会える時間が無かったから帰るのが名残惜しくて、顔を見合わせ公園に寄り道。滑り台を駆け上がって笑って、ブランコをどっちが高く焦げるか全力で勝負して笑いあって、まるで少年少女のようにふたりははしゃいだ。
「ふ、はあ、疲れたね、あはは」
「ほんま俺らガキちゃう?いつぶりやろ、こういうの」
 ふと沈黙が訪れ、きいきい、ブランコが静かに揺れる。
 飴色に照らされる彼女の横顔を盗み見、あまりにも綺麗で白石はパッと顔を逸らした。
「も、もう帰らんとな…」
「うん…でも、まだ帰りたくないなあ」
 え、顔を向ければ彼女が切なそうな顔で白石を上目遣いに見つめた。どく、一瞬息が詰まる。
「…もうちょっと一緒にいたい……」
 白石は気付けば衝動的に彼女に口付けていた。「え、え、」
 戸惑う彼女にさらにキスの雨を降らす。すっかり彼女の息が上がった頃、やっと白石は口を離した。ぎゅう、と抱きしめて彼女の肩に顔をうずめる。
 耳を赤くしながら「あんま可愛ええこと言わんでや…こんな余裕ないキスするつもりやなかったのに…」
 ほんまかっこわる、呟く白石に彼女はきゅう、と心臓が締め付けられる。「で、でもうれしかったよ…」回された腕に力が込められて「はあ、かなわんわ、ほんま」


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