丸井ブン太
2023/04/04 08:45

 付き合って初めてのバレンタイン、スイーツ好きの丸井くんに少しでも喜んで欲しくて、何回も作り直したチョコレートケーキ。
「お、美味しいかな…?」
 一口食べた彼におずおず聞けば「んー…」と目を瞑ってもぐもぐ。不安で仕方ないわたしをからかうように焦らす彼にもどかしくなる。
「も、もう!」「ハハ、わりい、反応が可愛くてさ。ケーキめっちゃうまいぜぃ!百点!」「ほんと…!?」
 うれしい言葉を言われてふわふわした気持ちになる。
「ほんとにサンキューな。お前あんま料理したことなかっただろぃ?なのに俺のために作ってくれてすげー嬉しいよ、マジで」
 本当に彼はずるい。わたしは顔が熱くて、口元が自然とにやにやするのを抑えられなかった。
「褒めすぎだよ!でも、良かったぁ…味見しすぎて、ちゃんと美味しいかもうわかんなくなって」
 自分の必死さを思い出して思わず笑いが零れた。
「じゃあ食ってみる?すげー美味いからさ。ほら、あーん」
 意地悪く笑う彼に負けて小さく口を開けば「あ、美味しい…かも」「な?」
「うん、よかっ…」チュ。「えっ?」
 ほっぺたに柔らかい感触がして顔をあげれば、目の前に丸井くんの顔があった。

「なあ…俺、もういっこ欲しいモンあんだけど」

 甘くて低い声に耳と背中がぞくぞくして、さっきの柔らかい感触の答えがわかった。
「あ、あ、丸井くん…」
 びっくりして恥ずかしくて声が出ない。「はは、かーわい」生クリームがとろとろ溶けて、わたしおかしくなっちゃいそうだよ。


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