仁王雅治
2023/04/05 14:36
いつまで経っても緊張しいな彼女。肩が触れ合うたび、指を絡めるたび、平気な顔をしようとしているが耳の赤さを隠せていない。
いままで気付いてないフリをしてやってたが、そろそろ可愛くて死にそうじゃ、なんてらしくもなく思う。
ふとさり気ない瞬間、何だか込み上げるような急き立てられるような気持ちになって落ち着かなくなる。誰かを大切にすることがこんなにも難しいと初めて知った。
ほら、今も。手を繋いで、恥ずかしそうに俺の目を見てはにかむ彼女に堪らなくなって、気付けば俺は手を伸ばしていた。
ふに。親指でそっと下唇をなぞれば、「ひぅ」なんて声を漏らして、彼女は可哀想なほど顔を赤くした。
……勘弁してほしいぜよ。
泣きそうで、けれどどこか潤む瞳に期待が混じっているような気がするのは、俺の都合のいい願望なんじゃろうか。
ああ、もう、どうでもいい。
衝動に突き動かされて、じっと瞳を見つめながらゆっくりと唇を重ねる。
小刻みに震えている腕の中のこいつがどうしようもなく愛おしい。躊躇いがちに彼女が俺の制服をきゅっと掴んで、胸の奥がぎゅうと軋んだ。
触れ合っているだけなのに唇も頭もあつくて溶けそうじゃ。どっちの熱かもうわからないけれど。
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