・WWワンドロ・ワンライ
・夢小説ではありません
*
頭の中で呪いの声が木霊している。
ぼくは君たちが好きだった。今でも大好きだ。
スリザリンにからかわれて、やり返すことも出来なくてめそめそ泣いてるぼく。ジェームズは呆れてて、シリウスはスリザリンにもぼくにも怒っていた。リーマスは「大変だったね」と背中を撫でていた。
ぼくは怖かった。立ち向かうことも、立ち向かえないことで失望されるのも。ぼくはめそめそしながら尋ねた。
「な、情けなくてごめん。もうぼくにうんざりしたよね……?」
「ウンザリするね!」シリウスが言って心臓が痛んだ。
「でも悪いのはあいつらだろ!好き勝手させとくかよ。ピーターも泣いてないで作戦考えるぞ」
「で、でも今ウンザリするって」
「あはは、シリウスはピーターが虐められて怒ってるんだよ。でも素直に出せないんだ、カッコつけだから」
「お前には言われたくねえよ」
シリウスは拗ねたようにブスッとした。視線を逸らして髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜた。ぼくにも分かった。照れ隠しだって。
ぼくはまた涙が出てきた。
「ありがとう、ぼくなんかのために……」
「水臭いな、友達じゃないか」
「う、うん!良かった、み、見捨てられるかと……」
「ピーターはいらない心配をしすぎだよ。僕たちみんな君を大事な仲間だって認めてる」
リーマスが優しく言った。
「いい加減シャッキリしろよ」
「そうそう!手がかかるのは事実だけどね、そのくらいで僕たちの友情が途切れたりしないさ!なんなら、たぶんおじいちゃんになってもこうやって馬鹿やってるよ」
「うわ、想像つくわ……。さすがに大人になったらお前も落ち着いててほしいけどな」
ジェームズがお日様みたいに笑った。
「ピーターも思うだろ?僕たちはずっと友達だって」
首が取れるくらい必死にうなずく。なんにも取り柄がないぼくだけど、憧れの人達と、当たり前に隣で過ごす未来があるのが嬉しくてたまらなかった。
*
鼠の姿で下水道を一心不乱に走る。
仁王立ちで髪を振り乱して、狂ったように笑うシリウスの姿を一生忘れないだろう。
涙の出ない鼠の身体から、勝手にギーギーと音が漏れた。
ごめんね。ごめんなさい。
でも僕は死にたくなかったんだ。
後戻りは出来ない。闇の陣営が僕に目を付けた時から、こうなることは決まっていた。僕は抗えなかった。クルーシオがどれだけ痛くて苦しいか、目の前で誰かが無惨に死んで次は僕だと脅されるのがどれほど恐ろしいか、闇の帝王の凄惨な笑みがどれだけ凍るような気分にさせるか、きっと勇敢な君たちには分からないだろう。
死ぬのも、痛めつけられるのも、抗うには僕はあまりにも無力だったんだ。
そんなの君たちもよく知ってるはずだ。
不死鳥の騎士団なんて僕にはとても務められなかった。いつも逃げ出したくて、怖くてたまらなかった。
「僕たちはずっと友達だ」
ジェームズの笑顔が浮かんで消えた。
薄暗い地下で、一匹の鼠が鳴いていた。
ずっと友達