気づいたら見知らぬ町にいた。

人は体を通り抜け、木や建物、その他あらゆる物全てに触れない。

誰にも認識されない。



正直死ぬと思った。約束果たすまで、俺は死ねへんのに。



君の知らない物語 財前side




携帯を開き、電源が入らないことを確認し、舌打ちする。
完全に連絡手段も途切れてるっちゅーことやんな…

必死に叫んでる謙也さんを、立ち尽くしてる部長を、俺を、人が通り抜けていく。
この異常な光景に眩暈を覚えた。


「…何なんすかこれっ…!こんなんありえんっ……」

「財前、落ち着き。焦っても何も変わらへん」


…落ち着け、やて?


「っこんな状況で焦らん方がおかしいっすわ…」


落ち着けるわけがない。
何で部長はそんなに冷静でいられるんや。意味がわからへん。

部長の方が異常やろっ…



連絡手段は途切れ、何にも触れない、どこかも分からない。
こんな状況で落ち着けるわけ…



「もう…どうしようもないやろ…」



え…?


「…このまま死ぬってことっすか…誰にも気付かれないで……」



諦めきったような部長の表情を見て、視界が歪んだ。


…ははっ、こんなところで死ぬんやな俺。
むしろそう考えた方が気分も楽になった気がする。


「…」

自分がもし死んだらどうなるんだろうと考えて、真っ先に浮かんだのがテニス部のことだ。
部長として、何も貢献できひんかった気がするな…



“来年こそは、全国制覇…頼むで、財前”

“…はい”



「っ…」


部長と…約束したんに……
ホンマ、ホンマ…何もできひんかった。



「…すんません、部長…っ」


きっと先を歩き始めてる部長にはこの声は届いていない。
悔しさでいっぱいになり、思わずしゃがみこんだとき、




ガタンッ



「…っ!?」


今…
今、俺の見間違いでなければ、部長が自転車にぶつかった。

すかさず立ち上がり、部長のもとに走っていくと、ほぼ同時に自転車に乗った女は走り去っていった。

それを謙也さんが追いかけていく。



何が起こったか理解できず、部長と立ち尽くしていたが、我に返り、急いで走り始める。



「な、なんで…」

「わからへん。せやけど、触れたのは確かや。アイツにも、な」



…部長が、笑った。
驚きつつも、俺はとにかく謙也さんたちの後を追った。


もしかして、約束、果たせるかもしれん。


部長に見えないよう、俺も笑った。








君の知らないシリーズ終わり!
みんなそれぞれ思いがあったんですよ。
みんな追い詰められてて、そんなとき黒木に会った。

っていうことを伝えたかった。

三人ともホントに病みかけてましたw

×|×

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