「アレルヤ!」

 聞き慣れた声がする。アレルヤはふっと顔を上げて、前方を見た。誰かが近付いて来るのが見える。声の主は彼だ。耳の横の髪がふわふわしている。逆光になっていて、顔は見えない。

「アレルヤ。ここは海だ。お前も俺たちも水着を着ている。たまにはパーッとやろうや」
 肌の白い青年が、アレルヤの手を引っ張る。アレルヤはひたすら困惑した。
「いいですよお、だって僕……泳げないんです」
「別に泳げとは言ってないだろー、ビーチバレーすんだ」
「ええええ」
 アレルヤに拒否権はないらしかった。


 アレルヤはコートまでやって来て、目を見張った。球体のハロまで女子に混ざってコートで飛び跳ねている。どうやら女性三人とハロ対マイスター以外のクルー三人とドクターらしい。

「彼らを……どうやってまとめたんですか、ロックオン……」
「ミススメラギが賞品を用意したんだ。勝ったチームには、一日トレミー自由権が与えられる」
「……今でももう十分自由じゃないか」

 アレルヤがあきれていると、背後から高い声が聞こえた。
「アレルヤ・ハプティズム!!なぜ遅くなった!」
 眼鏡が太陽に反射しているが、切り揃えられた髪ですぐわかる。服装は水着ではなく、常のようなシャツとスラックスで、シャツの腕をまくり上げただけのスタイルだ。腕をしっかり組んで仁王立ちしている。
「ティエリア……」
「不本意だが、ガンダムマイスターは四人で一チームだ。君が来ないと我々は戦闘に参加すら出来ない。刹那・F・セイエイも待ちくたびれているぞ!」
「早く介入したい」
 いつの間にこんなに息ぴったりになったのやら、ティエリアと刹那は二人がかりでアレルヤをビーチバレーに促す。

「君達もトレミーを自由にしたいのかい?」
「そうではない。しかし、女性たちのチームが勝ってしまうと、トレミーの秩序が崩れかねない」
「ビーチバレーも紛争だ」
 二人とも言い分は全く違うが、どうも自分は参加しないといけないらしい。アレルヤも付き合うことにした。




 暑い日差しが照り付けて、肌を焼く音がするような気がした。誰かの手描きのコートは今までにあった乱戦を物語っている。アレルヤは土についたボールの跡をぼんやりと見ていた。
「アレルヤ、後ろだ!」
「えっ」
 ばあああん!と音を立ててアレルヤの背後に玉がつく。
「やったあ!」
 クリスが飛び跳ねて喜んでいる。そうだ、もう試合が始まっていたんだ。
「アレルヤ・ハプティズム!女性軍との戦いでは絶対に気を抜くなと言っておいただろう!!」
「っ、ご無礼!」
 ティエリアに叱咤され、アレルヤはキッと前を見据える。

「来るぞ」
 ロックオンが皆に号令を掛ける。スメラギさんのサーブだ。
「とぅ!」
 前方にいた刹那が飛び出して打ち返した。ハロがぶつかってそれを返して来る。
「アレルヤ、来たぞ!」
「よしっ」
 思いっきり打ち返したが、アウトの号令がかかる。線なんかもうあってなきじゃないか!文句を飲み込んでいたアレルヤを、ティエリアが責めた。
「だから、君と言う奴は……」
 すると、やる気を失いかけているアレルヤの中で声が響く。
(俺が、代わってやろうか……?)
(……ちゃんとルールを守ってくれるなら、いいよ、ハレルヤ)


 アレルヤ、ではなく、ハレルヤは大声を出した。
「女共……俺が相手してやるよ!!」
「負けないわよー」
 スメラギが笑う。また彼女のサーブだ、男たちは腰を低く構えた。大きな胸が揺れて、剛球が繰り出される。
 今度はハレルヤが強く打ち返した。負けじと少女たちも跳び上がる。




夏だね

 このまま季節が変わらないでほしいと願う僕を赦して







*


 お題・コルデさま
 長い上にオチがない……!!受験生のお伴にどうでしょう。


 

 



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