この少年は、滅多に断らない。とみに、自身がそれを受け入れて事が済む場合には。
それがわかっているから、ついつけ込んでしまうのだ。この子の優しさにつけ込んで、何度同じ夜を過ごしただろう。柔らかい銀髪を指に絡めながら、青年は自嘲した。
「……どうされましたか?」
少年はブルーの大きな瞳をゆっくりと開いた。限りなく澄んだ瞳に、自分の姿が映るのを見る。その背後には夜空が広がっていた。月が光を垂れ込めている。どうやら青年は窓を背にしていたらしい。少年は少し目を細めて、にっこりと笑った。
「眠っていなさい」
青年は青い瞳に手を被せた。睫が再びゆっくりと閉じるのを確認して、ゆっくりと手を離す。
目を瞑った彼の隣で、今度は青年も寝転がってみる。なるほど、窓の向こうには月が見えた。何もかもを慈しむような、青い月が自分を見ている。
横目で少年の姿を見ると、幸せそうに眠っている。それだけで満足だ、と思えたらもっとよかっただろう。
君をわたしだけのものに出来たならどれだけ幸せだろう。月すらわたしから彼を奪うばかりだ。憎くはないがすこし、悔しい。 青年の青い目に、月は映っている。
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