重要な使命があっても、あのひとの姿をつい目で追ってしまう。ああなんという厄介な病、それは恋!
グレミー・トトは悩んでいた。さも楽しそうに、さも苦しそうに。部下であるプルツーには「気持ちが悪い」と一蹴されたが、公私は基本的に別だと考えているグレミーは特に気にしていない。
道を歩いていると、またルー・ルカに出会った。いつもどおり、好きだ、だとか、一緒に来ないか、と告げた。
だが、今日は様子が変だ。初めて出会ったあの日みたいに、にこにこして自分の話を聞いてくれる。
「ルー……ルカ」
「どうしたの?」
「君に、触れたい」
ルーはにっこりと笑った。相変わらず天使のような笑みだ、グレミーはしばし見とれた。
「好きにしていいよ」
愛しいルー・ルカに面と向かって言われてしまうと、何をすればいいのか解らない。ただの青年がそこにはいた。
覚悟を決めて、ルーの肩に、腰に、手を回した。すると、総てを察した彼女が目を閉じる。グレミーは顔を少し傾けて、唇を近付けた。
やわらかい唇が触れる。革命を志して生きて来たグレミーにとって、それは初めての接吻だった。
ゆっくりと唇を外して、ルーの目を見た。きれいな目だ。
「グレミー、」
「なんだい」
「グレミー」
「グレミー」
「なん……だい……?」
「早く目、醒ませ。ムニャムニャして気持ち悪いぞ」
目の前にいきなり現れたプルツーの顔を覗き見る。見上げると、見慣れた天井が自分の上に覆い被さって来て、グレミーは愕然とした。
「夢オチとは卑怯じゃないか、ルー・ルカ!!」
グレミーは頭を抱えたが、ひどくリアルな唇の記憶があることは、やはり幸せでもあった。
「さっさと着替えろよ」
プルツーは苛立ったような声を出してグレミーの寝室から出ていった。
彼女が眠る上官に口づけしたのは、また別の話である。
好きにしていいよ
(あたしのことならいつでも好きにしていいってのにさ)
* お題・コルデさま
ルー←グレミー←プルツー……完全に妄想です!
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