少年は大切だった少女を心ごと埋葬した。男として彼女を助けてやりたかったと後悔ばかりが滲む。彼女の素姓も知らないから、墓石も立てられない自分が悔しい。沸き起こる感情は悔しさばかりだ。

「もう平気か、カミーユ」
 不器用な上司は、さも優しい大人のように少年に呼び掛ける。少年は、彼にも男らしくあってほしいと前々から言っていたが、子供の言葉は大人には通じないようだ。ましてや大人になっていると思い込んでいる人には。
「大丈夫です。もう、僕はわかってますから」

 上司はそれに対して何も問わなかった。「なにが」だとか、「どうして」だとか少しくらいは言ってくれてもいいのではないか、と少年は少し苛立った。あの人には問う言葉がないのだろう。そう解釈するほかなかった。少年が後ろを振り向くと、彼はもう見えなくなっていた。少年自身もここを離れたら戦いにまた身を投じなければならない。

 誰にも聞こえないのを確認して、最後に少女の身体に呼び掛ける。もう女みたいにわんわん泣かないと決めたけれど、もう一度くらい泣いてもいいだろうか。

「フォウ、」
 少女の名を呼ぶが、当然ながら少女に反応はない。この名は偽りの名だと言っていた。本当は何という名前なのだろう。出来ることなら一緒に探してやりたかった。少女の頬に涙を何滴落としても、彼女がまた笑ってくれるわけじゃない。わかっているけれど、涙が止まらなかった。
「フォウ、もう一度だけでいいんだ、僕の名前を」
(僕の名前を呼んでほしい)
 その一言は喉まで出て涙で掠れた。



コール マイ ネーム

 君に呼ばれて初めて好きになった名前だから







*


 お題・Aコースさま
 カミフォウが好きすぎるのです……



 



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