「わあ、着けて来てくれたんだ。ありがとう」
「どういたしまして」

 スーツとネクタイを取った下のごく普通のワイシャツの下に、派手な赤のブラジャーが透けている。
「女の人みたいだね」
 心にもないことを少年は口にした。目の前に佇む肢体は、筋肉で練り上げられており、女性的なところなどどこにもなかった。強いて言うなら彼の長い髪は遠目に見れば女性を思わせるか。いや、やはり、遠目に見てもこの身体は女性には見えないだろう。
 うっすらと見える赤に、少年は手を伸ばした。

*


 この少年の一族は、女と寝ることを禁止されている。一族に女が入ると厄介だからだ。一夜限りの関係であっても、絶対に許されない。どのようにして避妊を拒むかわからないからだ。
 なんと厄介な一族だろう。そう思いながらも離れることが出来ない己を男は自嘲する。なんと厄介な一族だろう。

*



「一度脱がせてみたかったんだ」
 少年の白い指が、シャツのボタンを一つ一つ外していく。そして、ぶ厚い胸に不釣り合いな、赤いレースで飾られた前開きのそれをゆっくりと外した。 胸には乳頭があった。彼の胸など何度も見ているはずなのに、初めて見るもののようだと感じる。ひどく興奮して、少年はそれに手をやった。ぐり、と親指を押し付けてみる。肌とは違う感触が伝わってきた。人差し指も使ってみる。どきん、どきんと上下する男の胸の緊張が、指に伝わってきた。
 ふにふにとつまんでいるうちに固くなってきたそれを、少年は、ゆっくりと口に含んで吸った。母親の乳房を知らない少年の舌が、男の乳頭にまとわりつき、唇と共にちゅうちゅうと音を立てる。
「……美味しいですか」
 頭上から響く男の声はくぐもっていて、何だか泣いているみたいだった。




*

 なんだこれ……
 乳、乳、雄ッパイ、ボインボイン。






戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -