私はもう狂ってしまっているから、あなたをすくい上げることが出来ない。そう言ったおまえの顔は、なんだかとても憔悴しているように見えて、おかしくなってしまった。
 本当に狂った人間は自分を「狂ってしまっている」などと言ったりするようなものなのだろうか?ぼくにはそれがよくわからない。ただ、おまえがそういう風にぼくを想ってくれるなら、それはそれでいいと思った。
 手を伸べてその頬に触れると、暖かい腕の中におさめられてしまう。少なくともこの体温に嘘はないと思えた。


 餌をもらって生き続ける金魚のように飼い馴らされてきたのはわかっている。
 深い海では泳げないけれど、それはそれで一向に構わないのだ。



 





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