瞼の裏が赤くなっていき、空が明るむのを感じる。
 じきに朝が来るのだろう。男は薄く目を開けた。

 空に浮かぶ星は疎らになり、月と共に輝きを弱めている。だが太陽はまだ昇り切らず、空は淡い色をしていた。
 まだ朝にはなりきらない。隣で眠る男に目をやった。


 隣で眠る男は、少し唸って寝返りを打ち、こちらを向く。瞼は動き、歯を噛み締めていた。
 夢を、見ているのだろうか。一体どんな夢を見ているのだろう?
 角張った顔を見つめ、そして触れる。瞼を撫でながら、閉じた瞼の奥の、優しい瞳を想った。


 もうしばらく起きないだろうから、もう一眠りしてしまおう。眠る男の温かい体に自分の体を寄せて、寝転がった。
 すると、己の冷たい四肢が温まっていくのを感じる。


 この夜が終わらなければいい。
 そうすればきっといつまでも傍にいられる。
 ずっと隣にいられるだろう。


 頬を温かい背中に擦り寄せ、背中を丸めて、男は再び目を閉じた。




夜明け前



*

 夜更けと対になるように書いたつもりでした。



 





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