自分を飾ることで過ぎる時を凌いだのだろうか。
 その装いは変わらない。
 あなたはあの日から何も変わらない。
 僕は少し背が伸びて、あなたに少し近づいた。


 ぬばたまの長い髪。
 遠い夜空のようにとてもきれいだ。
 すっとした背が、凛として、まるで一輪の花のようにきれいだ。

 そんなことを口にするとあなたは笑うけれど、「馬鹿だな」と笑って僕の頭を撫でるけれど、それでも僕の唇からは、その言葉が溢れる。


 この夜はきっと明けてしまうのだ。
 宵闇にあなたの黒髪は融けて流れて、消えていくのだろう。
 そして永遠に掴むことが出来ない。
 永遠に掴むことが出来ないのだ。


「朝なんか来なければいいのに」
 唇に乗った祈りのような言葉は、白くなっていく空に霧散して消えていった。




 





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