一目でその機体を乗りこなすセンスは、一言で言い表すなら「天才パイロット」だ。その言葉がこれほど似合う者をビリー・カタギリは知らなかった。
 驚きをもって迎えたあの場面を今でも忘れることが出来ない。



 少年のように笑って、金色の頭を振って、「行ってくる」と振り返る。
 その姿を笑って見送る僕は、彼を信じることしか出来ない。
 自分の手を見て、失ったその人を思い出す。
 空を真っ直ぐ見るあの深い緑の瞳は、同じ色で自分をも見た。
 カタギリ、と呼ぶあの声が未だどこかで聞こえるようだ。



「君がいないと、こんなにも空が遠いよ」
 青い空を眺めて呟いても、もう帰ってこない、帰らないのだ。



 青空は今日も頭上に広がっている。
 見上げると、華麗に空を舞う戦闘機の細い影が見えた気がした。






 





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