「だってわたし、あなたが……!」
 叫び立てそうになる彼女の唇に、青年はそっと人差し指を押し当てた。少し硬質な男の指が、少女のピンク色にグロスを塗った唇へと触れる。その感触に対する微塵の嫌悪感もなく、少女の心臓は激しく鳴り響いた。ドッ、ドッ、ドッ、心臓が飛び出しそうだ。

「静かに」
「……」
「空を、見てくれ」
「え……?」

 少女の見上げた空には、たくさんの流れ星が降っていた。白く輝く筋を描いて、烈しく輝いては消える。そうか、流星群が流れる日って、今日だったんだ。目を見張るほどうつくしい光景に、少女は目を輝かせた。
 少女が青年に目をやると、その黒い瞳にも星の輝きが映り込んでいた。
 すごくロマンチックだ、と思った。流れる星の雨を、並んで見上げている、わたしたち。
 少女はさっき封じられた発言の続きを口から発した。



「好き」
「何がだ」
「あなたが好き」



 青年は真顔で、隣に座っている少女を見た。清々しく輝いた横顔を、細い四肢を、ゆっくりと見た。直ぐにまた目を逸らし、星を見た。
 青年は「俺も君が好きだ」だとか、「君は星よりきれいだ」だとか、そんなことは一つも言わなかった。
 そうして少女も、言葉を求めることはしなかった。本当は答えがほしかったけれど、それはきっといつでも聞けると思ったのだ。

 ただ頭上に輝く星がきれいだった。



星空




 





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