目線の先には白い天井、腹には塞がりかけた大穴。



 いい女が、ちょくちょく世話しに来る。動けなけりゃあ何も出来ねえだろ、ってよ。全く、その通りでさ……
 小さな弟は心配して覗きに来る、あたしが笑っただけで安心して顔をくしゃくしゃにしやがるんで。かわいいだろ、つったら、女はいやに優しい顔をしやしてね。女ってのは、やっぱりいいもんですぜ。




 おいおい、
 返事がねえなあ、なあ。



 ああ、そうだ、あんた、死んだんだったなあ。
 なに、現実味がどうもねえのよ。あんたの死んだとこを見たわけでもねえですし。周りの奴等が死んだこともねえわけじゃねえけど。またあんたがひょっこり顔出して来そうな気がしやがる。あたしが寝てるのを笑いに来そうな、またメンドー持ち込んで来そうな気がしやがる。


 あんた、結局教えてくれねえでやんの、何にもよ。
 よく考えたら、結局あんたのこと何にも知らねえな、はは。あたしばっかりぺらぺら喋っちまいやしたね。


 そんな長げえ仲でもなかったのによ、隣にあんたがいねえのが、妙に寂しいのはどうしてですかねえ。
 ねえ……
 答えてくれても、いいんじゃねえですかね、冷てえなあ……



 まったく、寒い部屋だぜ。自分の声だけがやけに響きやがる。
 今度誰か扉を開けて入ってきたら、そのときは、隣にいてもらいてえもんだ。出来るだけ、そうさな、夜明けまで。
 ほら、誰か入ってきたぜ……





さあ
お隣へどうぞ
夜はまだまだ
長いから



*

やおいのつもりだった……




 






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