きっかけは……


空は雲一つのない晴天。絶好のお出かけ日和だ。

…それなのに私の心は晴れてはいない。むすっとした顔で恨めしそうにその原因を作った張本人に視線を送る。


「…そんな恨めしそうに睨んでもオレは何処かへ行く気なんてないからな」


少しつり上がった目と漆黒の髪が印象的な、黒猫を彷彿と思い浮かばせる桜井あまねの彼氏こと叶修悟は溜め息を吐きながら言った。

今日は久しぶりに部活が休みの日なのだ。それなのに修悟はベッドの上でゴロゴロしているのだ。

チラリと視線を向けても先程同様全く動く気配を感じさせない。まったりくつろぎタイム継続中だ。
そりゃあ毎日野球部の練習が大変だってことはマネージャーをしている私だってわかっている。だけど、一応彼氏彼女の関係なのだからデートのひとつくらいしてくれたっていいと思うのに。
 
ひとりで悶々としてみたが、特にこれと言ってやることもなく手持ちぶさたな私は修悟の部屋にある本棚へと手を伸ばす。もう諦めて漫画でも読んで暇を潰そうと思ったのだ。


どの漫画を読もうか悩んでみると修悟らしいというかなんというか、本棚は野球漫画一色だ。私は苦笑いしつつ一冊手にとって読んでみる。

「…あ、この男の子カッコいい」

「……………」


少しだけ修悟の周りの空気が変わったような気がした。気のせいだろうと思った私はそのまま漫画を読み始める。

「この男の子もカッコいいなあ。爽やかで性格も優しくて…――あ。」

今いいところなのに。そう言おうとしたら修悟に軽く睨まれた。どうして睨まれなければいけないんだろう。私はきょとんとした顔で彼を見る。


「カッコよくて、爽やかで優しくなくて悪かったな!」

「んな、別にそんなつもりで言った訳じゃないもん」
「どうだか」

「っ、私は修悟と一緒に遊びたかっただけであって、場所なんて何処でもよかったのに…修悟のばーか!」
「うわっ!おま、あまねオレを殺す気か!?」


手元にあった硬球を掴んで投げてみたが、ギリギリのところで避けられてしまった。くそう。そのまま当たればよかったのに。

「修悟のばーか。」

「な、なんだよ。」

「何で修悟は機嫌悪いのよ」

「は!?い、いつオレが機嫌悪くなったよ」

「さっき漫画読んでから機嫌が―…あ、」

「なんで急にニヤニヤするんだよ。気持ち悪い」

「私分かっちゃった。修悟は漫画に嫉妬したんでしょ?」

「っ、あぁそうだよ!悪いか」

「ううん。嬉しい!」


ニヤニヤ。そんな効果音がつきそうな位私は笑っていたと思う。だって修悟が理由はどうであれ嫉妬してくれたのだもの。愛されてるって感じる、嬉しくて嬉しくてニヤニヤしてしまう。

「……ん」

「え、修悟どうしたの?」

目の前に差し出されるのは修悟の手。何故そういう状況になったのか不思議に思って理由を聞く。


「あまねが何処かへ遊びに行きたいって言ったんだろう」

「うん!!」


私は修悟の手を取って明るい外へと飛び出した。
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