初めて抱いた感情

まだ朝練の時間には少し早く着いてしまったオレは何もやることがなく、ひとっ走りしてこようかと思案していると向こうから2つの人影が見えた。


「あれは…」


そう呟いたのとほぼ同時に向こうがオレの存在に気がついたのだろう。手を降って歩いて来た。
 
……1人を除いて。


「修ちゃーん!」


今まで静寂を保っていたこの空間には不釣り合いな大きく、それでいて元気な声が辺り一帯に響き渡る。

桜井あまねだ。


「おはよう!修ちゃん」

「……はよ」


修ちゃんって呼ぶなと怒ろうと思ったのだが、笑顔で挨拶を言われ怒る気力も失せてしまった。


「ほんま自分ら仲えぇなぁ」


いつの間に来たのだろうか、先刻あまねに置いていかれてしまった織田がそこに立っていた。少しばかり肩で息をしているのを見ると走って来たことが分かる。わざわざ走って来なくてもよかったのに。


「本当に?」

織田に仲が良いと言われたのが余程嬉しかったのか、もう一度聞き返すあまねに「ほんまに」と織田は笑いながら言った。


その光景を少し離れた所で見ていると、何故だか知らないけれどイライラしたような感情を覚えた。

…このイライラの理由を知るのはあと、もう少し先のお話。



(修ちゃーん!どうしたの?)
(いや、なんでもない)


 
 


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