幼馴染みは腐女子様

「こら、阿部隆也!おっきろー」

「そんなに大声出すな!!近所迷惑だろ!」

わざわざ耳元で叫ばなくても良いものを…くそ、絶対わざとだ。その証拠にあまねはにやにやと笑っている。

「隆也だって煩いよ〜?」
「良いから黙れ。」

「わー。隆也が怒ったー」
そう言ってあまねは逃げ出した。

「ったく…。なんでアイツはいっつもテンション高いん…」


あ、そうだ、忘れてた…。アイツ、桜井あまねは腐女子だった。んで、毎朝「おはようございます。お嬢様」的なアラームが鳴るんだ!とか嬉しそうに言っていたな。

あんなのの何処が良いのか全く分からないが。


「隆也、隆也ー!…このど変態!」

「誰がど変態だ!ゴルァ」
「え、だって隆也の部屋にエロ本隠してあったし、もしかしたらそれをオカズに三橋くんに置き換えてハァハァ言ってる西浦の正捕手の阿部隆y」

「それ以上言ったら〜?」
そんな妄想はしていない!!というかあまねはいつの間にオレの部屋に隠してあったエロ本を!?

あ、お前だったのか部屋に帰ったらキチッとベッドの上に置いておいたのは!!母さんと勘違いして墓穴掘ったんだからなこの野郎。

あまねのお陰で迷惑をかけられたあれやこれやを思い出しているとメラメラと怒りの炎が上がってきた。この恨みはらさでおくべきか…。


「キャー、阿部くんに襲われるー」

通り過ぎる人が皆振り替えってギョッとした顔で此方を見ているのが分かる。朝っぱらなんだから少しは言葉を選べ馬鹿。


「誤解を呼ぶような言い方止めろ!」

「あ、おい!!桜井様の登校だ!」

「おはようございます。桜井様」

「おはようございます。今日も一日頑張りましょうね?」

えらい切り替え早ぇな…。さっきまでギャーギャー言ってたのが嘘みてぇだ。

「あれ?今さっき何か言いました?阿部隆也くん?」
にこりと貼り付けたような笑顔にオレは騙されない。

「ギャー!あの桜井様が一般男子生徒に笑顔を!?」


けっ、普通の男子生徒で悪かったな。というか皆コイツに騙されているのに気付いてないのか?

あまねだって普通だろ?…いや、普通じゃなかったか。


「隆也ー何してんの?」

音もなく背後に現れるあまねに驚く。

「ちょ、あまね近すぎだろ!?」


慌てたように離れてくれと言うがなかなか言うことを聞いてくれない。それどころかニヤリと笑った。

(嫌な予感しかしない)

「あれー、もしかして照れてる?可愛いなぁ〜萌e…ぶふっ」

「ちょっとは自重しろ。」


***

待ちに待った放課後だ。やっと一日が終わると思うとなんとも言えない達成感を覚える。


「ちっ。なあまねいるとこっちの調子が狂わされて溜まったもんじゃねぇ…」
自然と愚痴も零れてきて、ふうと一息ついてみる。
「っと、今日部活は…無かったなそう言えば」

普段は野球部の練習で日頃の鬱憤を晴らして汗も流してさっぱりするのに今日に限って何もすることがない。

…暇だしテスト勉強もしなくてはならないので。

「図書室、行ってみるか」

あまねも図書委員だし、この時間ならいるだろ…って―!?

「なんでオレあまねの事、考えてんだよ!」

ガラガラと静かに図書室の扉を開ける。

「失礼しまーす…」

あ、いたいた。しかも本置いたまま寝てるし…それにしても…。

「幸せそうな顔して寝てるな…。」


ったく。あれ、あまねってこんな真面目な本読んでんだ…。

何気なくあまねの読みかけの小説を手に取ってみる。

「ーー!?」

目の前に広がるのはやたら肌色ばっかりの…ようは裸でくんずほぐれずあっはんうっふんな内容だった。男女じゃなくて男同士だけど!?

やっぱり、あまねはあまねはー。


「腐女sー…。」

「どうしたの隆也くん?あ、もしかしてこれ見て興奮したとか!?キャー。イヤラシイっ!」

「腐女子だ!」




(てか、いつ起きたんだよ)
(え、ずっと、起きてたよ?)
(んなっ!)
(ふふふ。この本を見て狼狽えてる隆也、可愛i)
(黙れ!!)


 
 



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