▼ 初恋ってなんですか
初恋って言ったら、甘くて酸っぱくて、切なくて…なんていうのが当たり前だけど私、あまねには一つも当てはまりません。どうしたら良いのでしょうか。
因みに私の初恋の人というのはですね、えーと…。
田島悠一郎、って言うんだけど。あの頃の私は、一目惚れって信じてなかったのに、不覚にも惚れてしまったんですよ。それで話しかけてしまったんです。
恋は盲目ってヤツだったんです。話してみたらいい人なのは分かったんだけど…。
「おい、田島!桜井がいるんだからエロ本しまえ!」
泉くんが急かすようにしまえと言うが一向にしまう気配がない。
「えー…。別にいいじゃんな、あまね」
「…………」
同意を求めるようにほら、と見せられる女性のアラレもない写真が眩し過ぎて直視出来ません。泉くん止めさせて!!
「ち、ちょっおま田島!!桜井に何見せてんだ馬鹿!!」
えぇ。もうね、これさえなければね!完璧なんですよ、活発で明るくて誰とでも接することが出来る。けど下ネタ大好きっていうね…
取り敢えずさっきの本は、泉くんが強制的にしまってくれた。
(泉くんありがとう)
「あ、そうだあまね」
「ん?なーに」
「今日、野球の試合あるんだけど来るよな」
「唐突だね。」
しかも、来てくれるよな?じゃなくて。来るよな?と来たよ…。私の予定は聞くつもりなんてないんだろうね。
「あまねが応援に来てくれたらホームラン打てる気がする」
何故か私が応援に行く前提で話が進んでいっている気がする。まあ。田島くんがそこまで言うのなら。
「行ってもいいよ」
「よっしゃ!」
「その代わり」
「?」
「ホームラン打ってよね」
「まかせとけっ!」
−−−−−。
カキーン
「ホームラン!」
青い空の下で響く声。
そして高く高く上がっていく一つの野球ボール。
「ほらなー!オレ、あまねの為に打ったんだぜ!」
バットを振り回しながら
大きく息を吸う田島くん。
「ホームラン!!」
きゅん。
不覚にもまた、ときめいてしまった。