心地良い感触

「と、轟くん?」

無言で私を背後から抱き締める轟くんに困惑の色を隠せずに声を掛けた。

「…………」

だが返事がない。只ひたすらに私のお腹のお肉を掴むふにふにふという音だけが私の耳に聞こえる。轟くんは筋肉があって引き締まっているから私のお肉が珍しいのか一心不乱に触っている。
 
無表情なのが怖いところだけど。でも私だって一応女の子だし、こんな顔の整った男の子に触られたら心臓がいくつあっても足りない!という訳で。

「ちょ、っと待って!轟くんお腹のお肉掴まないで、お願いだから、恥ずかしいからやめてください」


暴れてみるがなかなかどうしてうまく行かない。轟くんは綺麗によけながら、しかも手を止めずにふにふにふにと触っている。轟くんって意外と器用だよね、こういうのはいざと言うに発揮したほうが良いって私思うよ。


「楓の腹柔らかいな」
「や、やめっ。誰か、誰か助けてー!」


誰かに助けを求めようと周りの皆を声を掛けるが誰も止めてくれない、ていうか動こうとしてくれない。いやむしろコイツ等真昼間からイチャついてんなあ。くらいにしか思ってないようで生暖かい眼差しをして来る。自分の身は自分で守れってことですね、わかりました。


「轟くん、乙女のお腹を触らないでくれるかな」
「それは出来ない」
「なんでだ!?」


きっぱりはっきり言いおったぞこの人、しかもすごく真面目な顔でキリッとしてカッコいいのが本当に腹立つけど。こんな状況じゃなきゃ私絶対死んでたよ、格好良すぎてね、うん。この状況じゃなきゃ。あの、本当に離してくれませんかね?

結局相澤先生が来るまで轟の攻撃が止むことはなかった。



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