君に捧ぐ | ナノ
失恋

私、こずえの目の前には真剣な顔をした田島悠一郎くんが立っている。ここには私と彼の2人だけだ。窓から部活動をしている生徒たちの声が聞こえる。田島くんももう少ししたら野球部に行くのだろう。
 
「オレと泉どっちが好きなんだよ」

「あ、私は…その…田島くんが1番好きだよ」
 
言ってしまった。私は密かに思いを寄せていた田島くんへ精一杯の勇気を振り絞って告白した。
 
 
田島くんも私と同じ気持ちだと知って嬉しかった。
 

けれども、田島くんの顔は一向に晴れることはなく、不思議に思ったこずえは田島くんの顔を覗き込んだ。


彼は苦しそうな、悲しそうな顔をしていた。
 
 
「本当は嘘なんだろ?オレなんかじゃなくて泉の方が好きなんだろ?」

 
「え、田島くん違―…。」

「違わないだろ!!」



――いつも楽しそうに2人で笑っているのを見てたから――。

(馬鹿なオレにだってその位分かる。)
 
 
 
本当に彼の事が好きなのに、田島くんの目からは私をそういう風に見えていたことにショックを受けた。
 
誤解を解こうにも何を言えば良いのか分からない。私は自分で言うのも何だけれどそんなに賢くもないから……だったら。
 
 
 
「あはは……フラれちゃった。じゃあ暫くは気まずいかもだけど、友達として接してねっ!!」
 


思わず泣き出しそうになったが、此処で泣いてしまっては駄目と言い聞かせなんとか堪えた。
 

大丈夫、笑顔だよ、こずえ。田島くんの前ではいつも笑っていなくちゃ。
 
 
 
「じ、じゃあ、私もう…行くね」
 
 
私は今、出来る精一杯の笑顔をしているつもりだが、果たして彼の目にはどう映っているのだろうか? 

田島くんにはヘラヘラ笑っているように見えているのだろうか…孝介とお喋りをして笑っているように――。



「っ、じゃあ、ばいばい…っ」


息が詰まりそうになってあたしはその場から逃げるように走り去った。



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